みかん小説
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"一日五百円で飼われた妻" 第13話

連続。 度も触れられていない貨。

目の朝、彦は百円玉を置く際、しだけ指先に力を込めた。 カチャリ、といつもより鋭い属音が響いた。 彼は靴を履き終えても、すぐにはちがらなかった。屈んだ姿勢のまま、玄関でエプロン姿の私をじっと見げた。

「……由美」

その声には、いつもの完璧な余裕がなかった。 わずかに微細な、苛ちとの混ざったざらつきがあった。

「君、最、このおを使っていないね」

私は皿を見ろし、それから彦の目をまっすぐに見つめた。 そして、これ以なく無垢で、無防備な主婦の微笑みを浮かべてみせた。

「ええ。最、お買い物もにあるもので夫できているし、特に買いたいものもないの。せっかくあなたが働いて稼いでくれたおだから、無駄遣いしないのが番でしょう?」

完璧な「模範解答」だった。 彼が、私に求めてやまなかったはずの、慎ましく、無欲で、従順な妻の言葉。

しかし、彦の顔はれなかった。 それどころか、彼の瞳の奥に、らかな揺がった。

が者を支配する、その根底にあるのは「相が自分を必としている」という確信だ。 パン屑を投げてやる側が優位にてるのは、元で飢えた鳩がそのパン屑に群がるからだ。 もし鳩が、投げられたパン屑を瞥もしなくなったらどうなるか。

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力を失うのは、パンを握りしめているの方なのだ。

彦の喉が、引き攣るように微かにいた。

「……何か、欲しいものはないのかい? コンビニのスイーツとか、君の好きな雑誌とか」

「ううん、丈夫。あなたがいるだけで、私には分だから」

私は優しく微笑み、彼のスーツの襟元をえてあげた。 彦の体が、わずかに直した。 彼は何かを言いかけ、しかし論理に私を咎める言葉が見つからず、最終にひどく居悪そうに背を向けた。

「……そうか。なら、いいけどね」

い取りでドアをけ、彼がていく。 ドアスコープから覗く彼の背は、いつもよりわずかに丸まり、どこか自信を失ったように見えた。

私は皿に残された百円玉を指先で弾いた。 コインがくるくると回り、静かにタタキへ落ちる。 拾いげる気にもならなかった。

私の勝ちだった。 なくとも、この玄関というさな戦において、私は初めて彼の綱をしたのだ。

だが、彦という男が、この程度の違で引きがるはずがなかった。

*

その週末の夜。 嵐がやってきた。

夕を終えた直、彦はリビングのテーブルに、枚の真しい類を置いた。 それは、彼が自作した『庭内経済統制に関する』とかれた用だった。

「由美、座りなさい」

その声は、く、たかった。 いつもの優しい夫の仮面は剥ぎ取られ、そこには徹な管理者の顔があった。

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「最、世では物価が続いているだろう。がの計も、これまでのやり方を見直す必がある。これからは、庭に入ってくるすべての資を、僕のつの座に完全に元化することにした」

私は黙って彼の目を見つめた。

「音から聞いたよ。君が最、夜に所の物流センターで、しばかりの軽作業を伝っているらしいね」

臓がねた。 だが、すぐにい直した。音が漏らしたのではない。彦が音を問い詰め、音が事に私と打ちわせていた通りの「最限の嘘」を答えたのだ。

『お母さん、最計を助けたいって言って、夜にしだけ所の仕分けのバイトにってるみたい』

そう言わせるはずになっていた。

「ええ」私は静かに頷いた。「しでも、お役にちたくて」

彦は酷な笑みを浮かべた。

「殊勝ながけだね。でも、由美。夫婦というのは同体だ。庭内に『個の隠し』がすることは、破滅の始まりなんだよ。……君がそのバイトで稼いだおは、円残らず、毎この庭用座に振り込んでもらう。君の元に現を置くことは、切許しない」

彼は机を指先でトントンと叩いた。

「それが嫌なら、今すぐそのバイトを辞めなさい。君に勝な単独を許すつもりはない」

それは、彼が放った決定な「王」のはずだった。

私の自由を奪い、再び元の檻のへ力ずくで引き戻すための、最の首輪。

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