"一日五百円で飼われた妻" 第12話
のフォルダについて――を、切否定せずに最まで聞いてくれた。
「典型な、経済・精神DV(モラハラ)ですね」
佐藤さんは、きっぱりとした調で言った。その言だけで、私のの迷いが、気に吹きんだような気がした。
「由美さん、あなたはおかしくありません。相は暴力を振るわないことで、あなたに『自分が悪いのだ』とい込ませ、支配を完成させてきたんです。……でも、現実な話をしましょう。歳、専業主婦の自は、簡単ではありません」
「分かっています。度、面接に落ちました」
「ええ。今のあなたに必なのは、発逆転の就職ではありません。まず『にて、誰かと関わり、円でもいいから自分の名義で稼ぐ実績を作ること』です。幸い、隣の区でひとり親庭や自を目指す女性向けの、無料の夜PCスキル講座があります。週に回、だけ。通えますか?」
「通います。何があっても通います」
佐藤さんはさらに、つの求票を差ししてくれた。
「それと、私のりいがやっている個経営のさな物流センターで、夜の伝票入力のアルバイトを募集しています。週、からまで。は最賃ですが、完全な個事業主からの現払い、あるいは指定座への振込が能です。これなら、ご主の管理するメインバンクを通さずに済みます」
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「夜のから……」
彦が帰宅し、夕を終えて、自に籠る帯だった。 音の協力があれば、能ではない。
「やります。やらせてください」
そこからの々は、との戦いだった。
彦が残業で遅い、あるいは彼がリビングでテレビを見ている隙を突き、私は音の部で、古いノートパソコンを使ってキーボードの練習をねた。 のブランクは残酷だった。指がうようにかず、ブラインドタッチもままならない。ショートカットキーを覚えるだけでが割れそうになった。 それでも、私は暗ので指をかし続けた。
物流センターの伝票入力は、え切ったプレハブでの作業だった。 たい蛍灯の、量の配送伝票の数字を、ひたすら画面に打ち込んでいく。 最初の週は、肩が鉛のようにくなり、腱鞘炎で首が痛んだ。 それでも、週、センターの所から渡された万千円の茶封筒を握りしめた、私はプレハブの裏の自販の横で、声を殺して泣いた。
誰の許もらない。 誰の嫌も伺わなくていい。 私が自分のとを使って稼いだ、私だけのおだった。
私はそのおを、区役所の佐藤さんに教えてもらってしく設した、ネットの座へ預け入れた。通帳は作らず、カードも発せず、スマートフォンの体認証だけでログインできる座。
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彦が絶対に触れることのできない、私の秘密の陣だった。
そして、面で準備がむにつれ、私のには奇妙な変化が起きていた。
彦に対する恐怖が、急速に消え失せていたのだ。 彼が玄関で放つ言葉、彼が卓で見せる酷な線、そのすべてが、まるで台ののな役者の演技を見ているかのように、滑稽にえ始めた。
その変化は、ある朝、決定な形となって現れた。
*
の初旬。 彦の「百円訓練」が功を奏したと判断されたのか、玄関の皿には再び、の百円玉が置かれるようになっていた。
「由美、最はよく反省しているみたいだね。今から百円に戻してあげるよ」
そう言って、彦は満そうに勤していった。 だが、そのの夕方。 帰宅した彦が靴を脱ごうとした、彼のがピタリと止まった。
皿の央に、朝置いたはずの百円玉が、ミリもかずにそこにあった。
彦は怪訝そうに眉をひそめたが、そのは何も言わなかった。 彼がポケットから鍵を取りし、リビングへ入っていく背を、私はキッチンからややかに見送った。
翌朝。 彦は昨の百円玉を回収し、わざわざしい、ピカピカにる別の百円玉を皿に置いた。 「ってくるよ」と、し探るような線を私に向けてをた。
そして、そのの夕方。
百円玉は、やはり皿の真んに、そのまま残っていた。