"一日五百円で飼われた妻" 第11話
『音、今はお母さんと買い物にったかい? レシートの写真を撮って送ってくれるかな』 『お母さんがしいを着ていなかったか、さりげなく見ておいてくれ』 『お母さんは昔からが良すぎて、悪いに騙されやすいんだ。お父さんがいない、音がお母さんを見守ってあげないとね』 『今週のお遣いに千円しておいたよ。お母さんには内緒だよ、嫉妬しちゃうからね』
付は、音が学になった頃から、何百通にも及んでいた。
「お父さん、ずっと私に言ってたの」 音の瞳から、粒の涙がポロポロとこぼれ落ちた。
「お母さんは社会の仕組みが分かってないから、放っておくと変なセールスに引っかかるって。昔もそれで変なことになったから、お父さんが全部矢面にって守ってるんだって……私、ずっとそれを信じてた。お父さんは変で、お母さんはなだから、私が伝わなきゃいけないんだってってた……」
音は震えるで顔を覆った。
「でもね、お母さん。昨、お父さんが急に言ったの」
「……何を?」
「『を卒業したら、音はこのマンションでお父さんとで暮らすことになるから、学の通学を調べておきなさい』って」
部のの空気が、凍りついた。
「私、聞き返したの。『お母さんは?』って。そしたらお父さん、すっごく優しい顔をして笑ったんだよ。
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『お母さんはね、し静かなところで、自分のペースで暮らすリハビリが必なんだ。音もお母さんの荷になりたくないだろう?』って……」
音の細い肩が、激しくした。
「嘘だよね? お父さん、お母さんを追いす気なんでしょう? 私を方にして、お母さんをぼっちにして……ずっと、私を使ってお母さんを見張らせてたんでしょう!?」
「音……」
私はちがり、泣きじゃくる音をく抱きしめた。 娘の細い背が、恐怖と罪悪で刻みに震えている。
、私が守ろうとしてきた庭の最の砦が、目ので崩れ落ちていた。 彦は私から自由を奪っただけでは飽きらず、私の番する娘のまで、自分の監カメラの部品として利用していたのだ。 そして娘にも、「おが母親を見張っていたから、母親は追いされたのだ」という、消えない呪いを植え付けようとしていた。
「泣かないで、音。あなたのせいじゃない」
私は音の涙を、荒れた指先で拭った。 私の声は、自分でも驚くほどく、静かだった。
「お母さんはね、借なんて度もしたことないの。誰かに騙されたことも、無駄遣いをしたこともない。お父さんが言っていることは、全部、全部嘘よ」
音は目を真っ赤に腫らしながら、私の顔を見げた。
「……本当?」
「本当よ。お母さんは昔、ちゃんと会社で働いて、自分のおできていたの。
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お父さんはね、お母さんが自分のでてるようになるのが、怖くてたまらないのよ」
音は私のを、両でぎゅっと握り返した。
「私、もうお父さんの言うこと聞かない。お母さんの写真も、レシートも、絶対に送らない。お母さん、逃げよう。卒業したら、私も緒にていくから……」
「いいえ、音」 私は首を横に振った。
「あなたは普通に勉して、きたい学にきなさい。あなたのを、こののいざこざで犠牲にしちゃ駄目。……でもね、つだけ、お母さんを助けてほしいの」
「何……?」
「お父さんのでは、今まで通りにしていて。何も気づいていないふりをして、お父さんの『いい娘』でいて。それが、お母さんを番助けることになるから」
音は唇をく噛みしめ、やがて、さく、しかし力く頷いた。
*
その夜を境に、私の世界は反転した。
私はもう、ただの怯える被害者ではなかった。 彦が百のシナリオを描いているのなら、私はそのシナリオの裏側で、彼が像もしない結末を用しなければならない。
私はを始した。
まず向かったのは、隣町の区役所にある『女性相談窓』だった。 自分のむ域の役所では、彦のや学関係者のに入るリスクがあったからだ。
面談ブースで迎えてくれた代の相談員、佐藤さんは、私の話――百円玉の遣い、千百円の教材費で百円に減額されたこと、エクセルの記録、そして「卒業」