"追放された偽物令嬢、奇跡の霊泉で村ごと成り上がります" 第7話
「ひとつ、ふたつ、みっつ……お母さん、お皿は枚あるよ」 「文修……? お、今……」 町の総病院で精密検査を受けた医師は、信じられないというようにレントゲン写真を眺め、何度も首を傾げた。 「奇跡としか言いようがありません。滞していた脳の神経伝達物質が、急激に活性化しています。能は同代の健常児と同等、いや、記憶力に関してはそれ以です。これなら、来には普通学級に問題なく入学できますよ!」 診察で、佳代は声をげて泣き崩れた。 父もまた、分いで何度も目を擦っていた。 「幸根……おが帰ってきてから、うちには良いことばかり起きる。おは本当に、うちの福の神だ……」
*
がまり、空がく澄み渡る頃。 私の元には、本の緊急着信が入った。 ディスプレイに表示された名は、幸の男——かつて私の義兄だった、幸本部からだった。
話にると、受話器の向こうから受話器を握り潰さんばかりの号と焦燥が漏れ聞こえてきた。 『幸根か!? 頼む、今すぐ本社のメインシステムにアクセスしてくれ! 原因のエラーで基幹ネットワークが完全にダウンしかけている!』 「……お兄様。私はもう、幸のではありません」 『そんな悠なことを言っているじゃないんだ! あのシステムはおが学の研究と共同で発したオリジナルフレームワークを使っているだろう! 部のセキュリティ会社じゃ構造が複雑すぎてがせないんだ! あと分で全データが消失する! そうなれば、損害は億円をらないんだぞ!』
かつての恩義をい、私がPCをこうとした、そのだった。
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話の向こうから、ヒステリックな女の切り声が割り込んできた。奈々だった。
『お兄様、何をその貧乏女にをげているのよ! 会社の密を、追いされた棒猫に触らせる気!?』 『奈々、黙っていろ! 会社のがかかっているんだ!』 『嫌よ! あいつは絶対に幸をんでるわ! わざとシステムを破壊して代を求するに決まってるじゃない! おい、幸根! あんたなんかの助けを借りるくらいなら、会社がどうなったってマシよ! 度と私たちのに現れないで!』
プツン、と受話器の向こうで通話が途絶えた。 私は静かにスマートフォンの画面を伏せた。
(……ええ。それがあなたたちの選んだ答えね)
分。 青葉の経済ニュース速報が、ネットを駆け巡った。 『商社・幸グループ、基幹システムの致命障害により全取引データが止。定損害額は数億円規模か。株価はストップへ』
信之介から、いメッセージが届いた。 『幸の奴ら、自滅したな。おがを引いて正解だ。関わっていれば、全ての責任を擦り付けられるところだった』 『最初から、私には関係のないことです』 そう返信し、私は端末をポケットに収めた。 世で私を縛り付け、へと追いやった酷な族の破滅の音が、くの都会で確かに鳴り響いていた。
*
その夜は、抜けるような青空のに訪れた、澄み渡る『夜』だった。
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桃川の空には、の盆のような見事な満が輝いている。
杉の広い庭先には、甘くばしい、何とも言えない芳がち込めていた。 私が発した、霊泉と自製の最級麦、そしてで採れた野のサフランや薬膳素材を練り込んだ特製の『夜限定・薬膳餅』が、窯から焼きがったのだ。
黄の焼きがつき、表面には繊細なの紋様が浮き彫りになっている。 割ってみれば、からとろりと溢れすのは、自製豆の滑らかな餡と、霊泉で育ったの実のばしいペースト。 べた蛍が、蕩けるような表を浮かべた。 「……美しい! お姉ちゃん、これ、今までべたどんなお菓子より美しいよ!」 志津も、文修も、父も母も、で餅を頬張っている。
直売所とネットショップに「夜限定」として品した途端、注文の通音が狂ったように鳴り響いた。 百個用した限定箱が、わずか分で完売。 「幸根ちゃん、追加注文の問いわせが止まらないぞ! 県の級料亭からも連絡が来てる!」川が鳴をげながら話を押さえている。
同じ頃、青葉の級会員制バー。