"処刑寸前の冷宮幼女、心の声で国を救う" 第11話
陸原はややかに目を細めた。またしても、あの娘の声が命を救ったのだ。 「解毒は能か」 「は、期に発見できましたゆえ、全力で解毒薬を調いたします! あれば完全に抜くことができましょう!」 「極秘裏にめよ。決して部に漏らすな」
*
翌朝。 喬氏の失脚により宮の勢力図が激変する、皇后・婉婉は完全に追い詰められていた。
彼女の宮殿である楽殿に、賢妃となった謝氏と々が呼びされた。 殿内には苦しい沈黙が満ち、座にはややかな笑みを浮かべた皇后が座している。 そしてその傍らには、見らぬ若い侍――肖何(ショウ・カ)が控えていた。
「賢妃、そなたに尋ねたいことがあります」 皇后が静かにをいた。 「かつてそなたが宮にいた頃、この侍・肖何と密通し、私通の末に々姫を産んだというのは、真実ですか?」
謝氏は息を詰まらせ、即座に平伏した。 「皇后様、滅相もございません! 々は違いなく陛のお子にございます! この侍とは、宮に事を運んできた折に見かけた程度で、親しい言葉を交わしたことすらございません!」
だが、侍・肖何がみて、に膝をついた。 「皇后様、申し訳ございません……。皇の血統を偽る罪のさに耐えかね、告いたします。々姫は、私と賢妃様の子でございます。その証拠に、賢妃様から賜ったの証の玉佩がございます。
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さらに……賢妃様のの胸元には、梅ののような形の黒子があるはずです!」
謝氏の顔から血の気が引いた。 宮に入った際、何者かに宝の玉佩を盗まれたことがあった。そして、胸元の黒子の位置まで言い当てられたのだ。
(うわぁ……! 原作にはない展だけど、皇后のやつ、反乱を起こすに邪魔な母とあたしを消そうと、偽の証言者を仕てげたんだ! 宮の粗末な呂を覗き見させて黒子を確認させたのね、汚い!)
々の声がりに震える、皇后は酷に言い放った。 「を改めなさい」 宮女たちが謝氏に取り縋り、無慈にそのの襟元を押し広げた。 のような肌のに、鮮やかな梅のの黒子がわになる。
「ご覧なさい! かぬ証拠ですわ!」 皇后がちがり、勝ち誇ったように宣告した。 「皇の血統を穢した罪、万に値します! この賤な親子を引きずりし、杖刑にて打ち殺しなさい!」
「母ぇぇっ!」 々が泣き叫び、謝氏が娘を庇ってに伏した、まさにその刹――。
「――何をしている」
轟くような号とともに、殿の扉が蹴破られた。 姿を現したのは、眉にいりの皺を刻んだ陸原であった。
皇帝の突然の現に、皇后の表が瞬凍りついたが、すぐに毅然とした態度を取り繕った。 「へ、陛……! 賢妃が侍と密通し、義の子を産んでいたことが発覚いたしました。
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皇の尊厳を守るため、処刑を命じたところでございます」
「々が、朕の子ではないと?」 陸原の双眸に、絶対零度のが宿る。 謝氏は涙を流して皇帝の元に縋り付いた。 「陛、誓って貞など働いておりませぬ……! 々は、陛のお子にございます!」
(パパ! 騙されちゃ駄目だよ! この侍は皇后に買収されて嘘をついてるだけなんだから!)
陸原は々のを優しく撫で、然と言い放った。 「朕は賢妃を信じる。々は朕の娘だ」
「陛、私に流されてはなりませぬ!」 皇后がいがった。 「宮の噂を鎮めるためにも、【滴血認親(てきけつにんしん)の儀】をうべきです! に血を落とし、混ざりえば実の親子。混ざらねばの子。これで黒つけようではありませんか!」
々の内で、嘲笑が響いた。 (やっぱり来た、定番の滴血認親! どうせのにミョウバンか塩を仕込んで、絶対に血が混ざらないように細してあるんでしょ!)
陸原はその声を聞き逃さなかった。 「……よかろう。を運べ」
運ばれてきたの碗。 侍医が針を取り、陸原の指先と、々のさな指先から血を滴ずつ絞り、のへと落とした。
つの血の滴は、でゆらゆらと揺れ――決して交わることなく、弾きって底へと沈んだ。
「混ざりいません!」 皇后が狂に満ちた声を張りげた。 「陛、ご覧の通りです! この娘は陛の血筋ではございません! 直ちに処刑を!」