"処刑寸前の冷宮幼女、心の声で国を救う" 第9話
「今? ふふ、気がいわね。じゃあ、着替えてくるわ」
謝氏が奥の部へ姿を消した隙に、々は素くいた。 卓のの匂い袋を解き、に入っていた毒の末をに包んで隠すと、代わりに部の隅に置かれていた眠用の薬のをぎゅうぎゅうに詰め直したのだ。
(ふふん、これで母の匂い袋はただの『超眠アロマ』に変わり! ……そして、抜いたこの毒薬は――ふふ、今夜の宴で祁妃本に特ブーメランでお返ししてやるんだから!)
*
夜の帳がり、皇宮の極殿は無数の篝と豪奢な灯籠で昼のように照らしされていた。 満朝の文武百官と美しく着飾った妃嬪たちが居並ぶ、玉座に座す陸原ので、宴の幕が切って落とされる。
「陛、本は聖誕の佳きにございます。妾が丹精込めて刺繍いたしました千寿図を捧げます」 皇后・婉婉が淑やかな笑みを湛えてちがり、美辞麗句を連ねる。 その隣では、祁妃が勝ち誇ったような線を、末席くに座る謝氏へと送っていた。
々は母の袖をそっと引き、無邪気な声で囁いた。 「母、さっき祁妃様が助けてくれたお礼に、お酒を注ぎにこうよ!」 「ええ、そうね。礼を尽くさねばね」
謝氏に連れられ、々は祁妃の席へとみた。 「祁妃様、素らしい礼を賜り、より謝申しげます。お杯をひとつ……」
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「お酒は結構ですわ。がりなさい」 祁妃は骨に顔を背けた。その瞬、々のさな体がわざとらしくよろめき、祁妃の豪奢な絹へとぶつかった。
「きゃっ!」 「な、何をしますの、無礼な!」 祁妃が声をげた拍子に、その豊かな黒髪を留めていた黄の簪がへと落ち、甲い音をてた。
「ごめんなさい、祁妃様! 々、わざとじゃないの!」 々は慌てての簪を拾いげるふりをして、指先に隠していた毒の末を、簪の透かし彫りの隙へと素く擦り付けた。 「簪を汚しちゃってごめんなさい! お詫びに、母の匂い袋を差しげます!」 「寄らないで! そんな汚いもの、いりませんわ! くがりなさい!」
祁妃は嫌悪を剥きしにして々を突き放し、拾われた簪を乱暴に髪へと戻した。 そのやり取りを、隣席に座っていた麗妃が淡な目で見ろしていた。 「祁妃様がおみにならないのでしたら、妾が代わりに頂きましょう」
麗妃が謝氏の捧げた杯を受け取り、干した――その、わずか数瞬であった。
「……う、ぐっ……!?」 麗妃の喉から、押し殺したような苦悶の呻きが漏れた。 その体が激しく痙攣し、元から赤黒い血を吐きしてへと崩れ落ちたのである。
殿が静まり返り、次の瞬、鳴が爆発した。
「麗妃様が倒れられた!」 「毒だ! 宴の席で毒が盛られたぞ!」 宮女たちが狂乱し、兵が斉に剣の柄にをかける。
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玉座の陸原がちがり、絶対零度の声を響かせた。 「侍医を呼べ! 何者だ、朕の宴で凶に及んだ者は!」
その混乱の、祁妃がちがり、鬼の首を取ったような叫び声をげた。 「陛! 犯は謝氏にございます!」
百官の線が斉に、青ざめる謝氏へと突き刺さる。 「謝氏が々を連れて酒を捧げに来ましたが、私が断ったため、麗妃が代わりににいたしました! 謝氏が杯に毒を仕込んだに違いありません! 直ちにそのを捜索なさいませ!」
皇后・婉婉もまた、痛を装った声で追従した。 「陛……祁妃の申すことにも理ございます。謝氏の潔を証するためにも、辺を改めさせるべきかと」
「妾は……妾は何もしておりませぬ!」 謝氏が必に訴える、々ののなかで激しい毒舌が炸裂していた。
(あーあ、案の定だよ! 本当は皇帝を毒殺するはずだったのに、麗妃がんじゃったからって、全部母に擦り付ける気ね! でも残でしたー! 母の匂い袋のはもうすり替え済みだし、本物の毒はアンタののに刺さってんだよッ!!)
陸原のに届く、痛なまでの内なる種かし。 皇帝は唇の端をたく引き結び、淡々と命じた。 「……趙総管。謝氏のを改めよ」
趙総管がみて、謝氏の腰から匂い袋を預かり、駆けつけた李侍医へと渡した。 祁妃が勝ち誇った笑みを浮かべ、李侍医を促す。
「さあ李侍医、そのに恐ろしい劇毒が仕込まれているはずですわ! く陛に申しげなさい!」