"処刑寸前の冷宮幼女、心の声で国を救う" 第8話
朝議が散会した、玉座に残った陸原は、満そうに腹をさする々を見ろした。 「々。そなたの功績は極めてである。褒美として、望むものを何でも申すがよい」
々はぱちくりと目を瞬かせ、あざとく首を傾げた。 「えへへ、父、褒美なんていらないよ。々は父のお役にてればそれでいいの」
だが、そののでは、激しい歓の雄叫びががっていた。
(よっしゃぁぁぁ! これで飢餓のフラグは完全消滅! 反乱軍の兵糧も奪ったし、暴は起きない! ……でも、油断は禁物。の夜は皇帝の聖誕祭、【万寿節】なんだから! 原作説じゃ、この万寿節の宴席で、あの毒蜘蛛みたいな皇后と祁妃が組んで、皇帝の杯に毒を盛るんだ。皇帝が倒れて混乱した隙に、の反乱軍が気に攻め込んでくるはずになってる……。あたしはの宴の混乱に乗じて、ママと緒にを抜けすんだからね!)
陸原のが、昏く細められた。 ――万寿節。 毒蜘蛛のような皇后。 そして、の夜に計画されている弑逆。
皇帝はちがり、逃の計画に胸を躍らせる幼い娘のに屈み込んだ。 きな、傷跡の残る掌が、々の柔らかい頬を包み込む。
「々」 「……ふぇ?」 「そなたに何でも望むものをやろう。……だがな」 陸原の声は、甘美なまでにく、抗いがたい絶対の鎖となって響いた。
「朕の側をれることだけは、が覆ろうとも、決して許さぬぞ」
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々は背筋をたいものが駆け抜けるのをじ、引きつった笑みを浮かべた。 (え……? な、何そのすぎる……!? あたし、逃げられないの……!?)
*
その刻限、宮の奥くに位置する皇后宮の密。 い帳の奥で、艶やかな磁の肌を震わせる美女が、の男の胸に縋り付いていた。
祖国の正宮――皇后・婉婉(エンエン)。 そして彼女を抱き寄せるのは、漆黒の錦を纏い、酷な野を瞳に宿した異姓の王――楚王(ソオウ)であった。
「……喬秉の隠し倉庫が吾に暴かれ、万の軍糧がすべて没収されただと?」 楚王のい声に、抑えきれないりが滲んでいた。 「貴も処刑され、祁妃の族も監に置かれた。体何が起きているのだ。陸原の奴め、急に神仏の啓示でも得たとでもいうのか」
「楚王様、お気を落とさないで……」 婉婉はたい指先で男の胸元を撫で、毒蛇のような微笑を浮かべた。 「軍糧を失ったとて、勢に響はございません。夜は陛の万寿節……。祁妃を利用して、あの愚帝の杯に無無臭の劇毒を仕込ませるはずは、すでにっております」
婉婉の瞳に、昏い殺が渦巻く。 「あの男が血を吐いて倒れれば、宮は混乱に陥ります。その、楚王様がの勢を引き連れてを破れば、玉座はあなたのもの……。あの宮からいがってきた謝氏の親子も、まとめて虫けらのように踏み潰して差しげますわ」
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楚王は獰猛な笑みを浮かべ、皇后の顎を引き寄せた。 「よく言った、婉婉。の夜、陸原の首を刎ね、がで貴様を唯の伴侶として迎え入れてやろう」
蝋燭の炎が吉に揺らめき、のを壁にく引き伸ばす。 帝国の命運を分ける血塗られた宴――万寿節の夜が、刻刻と迫っていた。
万寿節――祖国皇帝・陸原の聖誕を祝う国宴の当の朝、福殿の扉を内務府の宦官が叩いた。
捧げ持たれた朱塗りの盆のには、目も綾な刺繍が施された豪奢な礼と、豪奢な糸の匂い袋が載せられていた。 「謝嬪様、今宵の宴のため、祁妃様がわざわざ仕てさせ届けてくださった礼にございます」
謝氏は恐縮するようにをげた。 「まあ、祁妃様が……。ほど丁にお礼を申しげねばなりませんね」
その傍らで、歳の々は匂い袋から漂う微かな甘いりにをひくつかせ、脳裏で警報を鳴り響かせていた。
(たよ! 原作通りの毒トラップ! 祁妃のやつ、母が皇帝に目をかけられたのが面くなくて、この匂い袋に特殊な毒薬を仕込んだんだわ。に濡れると毒性が気化して、くにいるを毒させる凶悪なやつ! 原作では別の側がこれで殺されて、母が代わりに処刑されたのよね……!)
母に怪しまれぬよう、々は満面の笑みで駆け寄った。
「母、とっても綺麗な装! 々、母が着たところを今すぐ見たいな!」