"ただいま温度管理中です!" 第10話
特級神獣を喰らえば、封印を破り完全な肉体を取り戻せると……」 「そうか……すべての線が繋がったな」
相馬が徹に呟いた。
「掌は最初から、野さんと体の特級神獣を、幽螭への贄として捧げる気だったのだ。演武会で疲弊させたのも、幽螭が容易く呑み込めるようにするため。秘境の資源など端からしない……!」 『あのクソ爺……! 俺たちを化け物の餌にするつもりだったのかよ!?』
琥珀が髪を突く勢いでを剥いた。
トントン、と無質なノックの音が、え切った朝の空気を切り裂いた。 扉の向こうから、掌の使いのたい声が響く。
「野ユイ。刻限だ。掌様がお待ちである。直ちに神獣を連れ、秘境の入りへ向かわれたし」
内の空気が、凍りついた。 逃げはない。掌の罠は、すでにをけて待っている。
だが――ユイは恐怖するどころか、血のついた拭いで指先をゆっくりと拭いると、護腕をきつく締め直した。 その唇の端には、かつて理尽な労働環境とブラック司を返り討ちにしてきた元社畜獣医の、徹極まりない獰猛な笑みが浮かんでいた。
「……私たちが贄? 等じゃないの、玄鶴掌。そのご馳の席に、んで乗り込んであげるわ」
ユイは体の使魔を見渡し、静かに、だが揺るぎない声で言い放った。
「ただし――どちらが喰われる側か、いらせてやるから!」
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玄鶴掌の案内で裏の禁にを踏み入れたとき、老の顔には聖のような慈の笑みが張り付いていた。
「野よ、秘境に入る栄誉をから祝おう。に眠る古の遺産を持ち帰り、が領州の威をさらにめてくれ」 「掌様、ごください。いただいたこのに余る贈り物……必ずや、利子をつけて倍返しにしてみせますわ」
ユイがややかな線を返すと、掌は元を微かに歪ませ、仰々しく結界の扉をいた。 歩を踏み入れれば、背で巨な岩扉が響きをてて閉ざされる。もう引き返すはない。
ち込める空気は、界のそれとは根本から異なっていた。湿り気を帯びた濃密な瘴気と、腔を突く腐敗臭。 元を見ろしたユイは、眉をひそめてち止まった。
「……何よこれ。面が妙にかくて柔らかいじゃない。誰か絨毯でも敷き詰めたの?」 『ご主様、気をつけてください。これはではありません』
相馬が静かに歩み寄り、元を爪で弾いた。カチリと、属のような鈍い音が響く。
『巨な蛇類の角質……俺たちが今踏んでいるのは、奴の剥がれ落ちた鱗のです』 「うわ、最悪。特の脱皮カスのを歩かされてたわけね」
ユイが毒づいたその瞬、暗の底から響きのような唸り声が轟いた。 巨な鎖が激しく擦れう属音とともに、井を覆い尽くすほどの漆黒の巨躯が鎌首をもたげる。
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幾もの赤黒い鎖に絡め取られながらも、爛々と輝く対の瞳が、侮蔑と貪欲さを孕んでユイたちを見ろしていた。 太古の邪竜――幽螭(ユウチ)。
『くくく……あの老いぼれめ、いつもは数わせの駄獣ばかり寄越す癖に、ついに本気をしたようだな。まさか特級神獣の沢と貔貅を揃えて献してくるとは』
幽螭の裂けたから、滴る涎が煙をてて蒸発した。
『その体を丸呑みにして霊核を喰らえば、この忌々しい封印の鎖などのように引きちぎれる。千の屈辱、今こそらしてくれるわ!』 『寝言は寝て言えよ、トカゲもどきが!』
琥珀が咆哮し、眩いを放って巨化した。 相馬もまた背で印を結び、徹な声で通告する。
『鎖で繋がれたでありながら、よくも吠える。が主を侮辱した報い、そのに刻むがいい』 『僧どもが、図に乗るな!』
幽螭が首を振るうと、暴のような瘴気が吹き荒れた。 巨獣同士の衝突が始まった。相馬が確に急所を指示し、琥珀が鋭い爪で鱗を裂く。輝羽もまた燃え盛る翼を広げ、角から炎の刃を叩き込む。 しかし、幽螭の纏う邪気は尋常ではなかった。 ふと、邪竜の邪悪な線が、方で戦況を見守るユイへと据えられた。
『神獣どもは頑丈だが……あのの娘は修も浅い。群れのを潰せば終わりだ!』
凄まじい速度で、巨な尾がユイを目掛けて薙ぎ払われた。