"ただいま温度管理中です!" 第7話
最恩寺が歓に叫んだが、現れた青――神獣は、最恩寺の首を無造作に掴みげた。
パキィッ、と骨の軋む鈍い音が響く。
「ぎゃあぁぁっ!? い、痛い! が、私のがぁっ!」 「私は温な性分だが、嫌いなものがつある」
青は氷のようにたい瞳で最恩寺を見ろした。
「つは、浄な血で私を縛ろうとする愚者。もうつは――が主、野ユイに仇をなす害虫だ」 「な……っ!?」 「の程をれ。穢らわしいがが主に届くに、へし折ってやる」
青がを放すと、最恩寺は首を押さえてを転げ回った。
「やるじゃん、入り!」
琥珀がび込んできてユイのにちはだかり、歯を剥きしにした。
「おい、おは何者だ?」 「が名は相馬(ソウマ)。古の神獣『沢(ハクタツ)』である。万物のに通じ、森羅万象の点をる者だ」
相馬は端正な顔ちをユイに向け、静かに片膝をついた。
「俺はのを見抜く。かつてのおは暴虐で凡庸だった。だが今のおは、自らの危を顧みず使魔を守り、至宝すら惜しみなく分け与えた。――そのような潔なる、従するに値する。野ユイ、涯をかけて貴女に仕えよう」 「相馬……ありがとう。よろしくね」
ユイが微笑んでを差し伸べると、相馬はそのを恭しく取った。
再び捕縛された最恩寺は、今度こそ弁解の余もなく、玄鶴掌によって「内弟子の永久剥奪」
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と「危険帯である鹿へのの幽閉」という極刑を言い渡された。
「野よ……体もの特級神獣を従えるとは、誠にれだ。が領州にとって千に度の慶事である!」
掌はユイを絶賛し、破顔してみせた。だが、その瞳の奥には、底れぬ暗い欲望が渦巻いていた。
「、全弟子を集めて演武会を催する。優勝した者こそが、名実ともに唯の秘境への入資格を得る。野、しっかり準備しておくがよい」 「……はい。謹んでお受けいたします」
ユイは恭しく礼してったが、その背を見つめながら内でややかに呟いた。
(公平な選抜……? 筋は通っているけれど、あの狸親父の目、どう見ても裏があるわね)
◇
その夜、暗に包まれた鹿の牢獄。
「せ……! ここからせ! 私こそが領州の才よ! 秘境の資格は私のものよ!」
狂乱する最恩寺のに、黒い羽織をまとったが現れた。玄鶴掌だった。
「掌様……! なぜ私をお見捨てに……!」 「騒ぐな、愚か者め。わしがおを見捨てるはずがなかろう。本当にしているのは、最初からおだけだ」
掌は懐から、禍々しいの気を放つ丸薬を取りした。
「これは『燃根丹(ねんこんたん)』。おの神鳥にませれば、無理やり潜能力を引きし、の姿へと化形させることができる。――の演武会、おのを特別に許す。
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野の神獣どもを極限まで削り、叩き潰せ」 「掌様……! やはり私を……! 必ずや、あいつらをつ裂きにしてみせます!」
最恩寺は狂乱し、その禁薬を受け取った。
その裏で、玄鶴掌の真の企みは遥かに邪悪なものだった。 彼は夜、裏の禁から秘境の淵へと識を繋げていた。
暗黒の底に繋がれた、無数の鎖。そのに蠢く巨な――数千に封印された太古の邪竜『幽螭(ユウチ)』。
『老いぼれ……今の贄は用できたのだろうな?』 「幽螭様、ごを。今は極の贄……特級神獣の貔貅と沢、体を捧げます」 『ほう……! その体を喰らえば、はこの鎖を断ち切り、真の自由を得られる! だが、全盛期の神獣を相にするのは骨が折れる。霊力を使い果たさせてから送り込め』 「抜かりはございません。演武会にかこつけ、輪戦で奴らの力を限界まで削り落とします。すべては……約束通り、わしを神仙へと導いていただくため」
掌の歪んだ笑みが、暗に溶けていった。
◇
そして迎えた演武会当。
広に特設された演武台の周囲は、異様な気に包まれていた。 だが、発表された規則を聞いた瞬、弟子たちのにざわめきが広がった。
「今回の演武会は『勝ち抜き戦』とする! 野ユイとその神獣は特級の実力を持つため、最初の守備側とする。の弟子は自由に挑戦でき、野は休憩を挟むことなく連続で応戦しなければならない!」
ざわつく観客席。
「休憩なしの連続防……!? いくら特級神獣でも、霊力が尽きてしまうぞ!」