"ただいま温度管理中です!" 第3話
あの女が俺たちをきた命として扱ったことなど、度たりともない。は捨てろ』
ユイはつの卵を並べてに置くと、腕を組んで案顔になった。
「なるほどね……完全に虐待の遺症で信になってるわけだ。信頼関係の構築にはがかかるのは、物園の保護物と同じね。――よろしい、専分野なら負けないわよ」
ユイは部の隅から壊れた箱と乾いた藁を集めると、主のか細い霊力を指先に集めた。
「卵の孵化において、最素は『均な温湿環境の維持』。霊力をただにぶつけるから殻が焦げてにかけるのよ。科学な温湿度管理陣、バージョン・〇の完成ね」
箱の底に藁を敷き詰め、微な属性の霊気と属性の霊気を交差させて、緩やかな対流をみす即席の恒温保育器を作りげた。 だが、主の肉体があまりに衰していたため、この程度の初歩な陣を敷くだけで体内の霊気の割を消費してしまい、ユイは肩で息をした。
「はぁ……元の持ち主、虚すぎでしょ。これじゃ戦うどころか逃げるのも苦労ね」
ユイが額の汗を拭っていると、保育器のに入れられた活発な方の卵が、突然がたがたと震えだした。
『あ、兄貴! やっぱり当たった! さっきをさなかったのはを待ってただけだ! このる箱、俺たちを蒸し焼きにする拷問陣だ! 俺は本当に馬鹿だ、信じかけるなんて……!』 『弟よ……来世で会おう』 『ご主様! 謝ります! もう度とねたり喋ったりしませんから、殺さないでください!』
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ユイは呆れ果ててを仰いだ。
「私、世でどれだけ極悪非な飼い主だったのよ……完全に虐待児の反応じゃないの。――ほら、怖くないから、入ってごらん」
そっとつの卵を藁の央に沈める。 じわじわと、計算されたよい温もりが殻の芯まで染み渡っていった。
『……え?』 『あったかい……? ふわふわして……なんだこれ、すごく気持ちいいぞ……?』 『兄貴、ここ、刑じゃないみたいだ……!』
殻の表面の張りが、目に見えて解けていく。
「ふふ、物の孵化の基本設備にしてくれるなんて、の主は本当に罪いわね。――あのね、にちゃんと謝りたいの。今まで痛いいをさせて、酷い言葉をぶつけて、本当にごめんなさい。どうかもう度だけチャンスを頂戴。これからは何があっても、あなたたちを番事にするから」
ユイがをげると、つの卵は完全に言葉を失ったように静まり返った。 頑なだった兄貴分の卵が、微かに揺れる。
『あ、謝った……? あの傲な女が……?』 『……まだ油断はならん。だが……』
ユイは微笑み、懐からさな瓶を取りした。主が唯隠し持っていた、霊獣の育成用滋養液「霊液(もくれいえき)」だ。
「じっくり信頼を築けばいいわ。ほら、喉が渇いたでしょう」
とろりとした緑の霊液を、殻の微細な気孔に優しく塗り広げてやる。 渇ききっていた殻が、瞬くに霊液を吸い込んでいった。
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『こ、これは霊液……!? あんなにを惜しんでもくれなかった女が、こんな貴なものを……!?』
驚愕の声をげる卵の表面から、頑固な黒ずみが剥がれ落ち、内側から眩いの彩が仄かに透け始めた。
「よしよし、たまちゃん、いい子ね。効果覿面じゃない」 『だ、誰がたまちゃんだ! それにの殻に勝に頬擦りするな!』
照れ隠しのようにねる卵を見つめながら、ユイはさく笑った。社畜活で擦り減っていたが、久しぶりに温かい充で満たされていくのをじていた。
◇
数。
「最恩寺先輩! 変です! あの野がきていました!」
領州の華麗な楼閣ので、取り巻きの弟子が転がり込むように報告した。 最恩寺レイは、入れされた爪を眺めながらたく眉をねげた。
「……きている? 私の霊撃を受けて、あの落ちこぼれが?」 「はい! それどころか急にが変わったようになり、あのつの黒い卵をく世話しているのです。貴な霊液まで惜しみなく与え、片方の卵などは、すでに神々しいを取り戻しつつあります!」
最恩寺の瞳に、昏い炎が宿った。
「数も無能のふりをして、まさか実力を隠していたというの……? おのれ、野ユイ……」 「先輩、今度こそ隙を見て完全に息の根を止め、顧の憂いを断ちますか?」