"油まみれの整備士と養子の秘密" 第4話
真央は私の胸に顔をうずめ、まるで子供の頃のように声をげて泣いた。嬉しくて、嬉しくて、これまでの苦労が馬灯のように蘇り、涙がどうしても止まらなかった。
そして学を無事に卒業した真央は、自分のだった「弁護士」としての第歩を踏みした。
都内のの弁護士事務所への就職が決まり、毎のようにスーツを着て忙しく駆け回るようになった。最初は社会としての慣れない活に戸惑う様子もあったけれど、ののトラブルや権利に関わるその仕事に対して、真央は確かな誇りとやりがいをじているように見えた。
「お兄ちゃん、聞いてよ。今は事務所でこんな難しい案件があってね……」
仕事帰りに夕飯の卓を囲みながら、真央は目を輝かせてそのの来事を私に話してくれた。
「おお、それは変そうだな。でも、どうなったんだ?」
「それがね、私の助言を聞いた依頼のが、『先、本当にありがとう』って涙を流して謝してくれたの! その、この仕事につけて本当によかったって、からったんだ」
真央のそのききとした表を見るたびに、私は胸がくなった。妹が自分の力でしっかりとを叶え、誰かのために役にっている。兄として、これ以の幸せがにあるだろうか。
そんなあるのこと、いつものように仕事から帰宅した真央は、夕の片付けを伝いながら、し照れくさそうな笑みを浮かべて私に言った。
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「お兄ちゃん、の夜って、何か予定ある?」
「ん? 特に何もないけど……どうしたんだ、急に改まって」
「ね、私にとって記すべき、初めての料なの。だからさ、頃お世話になっているお兄ちゃんに、何か美しいものをご馳させてほしいの!」
私は驚いてを止めた。
「おいおい、そんなの気を使わなくていいんだよ。初任なんだから、自分のために貯するか、欲しいものでも買いなさい」
「だめ! 初めてのお料は、絶対にお兄ちゃんのために使うって、ずっとから決めていたんだから。お願い、だめかな?」
真央は私の袖をキュッと引っ張り、潤んだ目で目遣いにおねだりしてきた。その真剣な勢いに押されて、私はわず照れくさい笑みを浮かべながら頷くしかなかった。
「わかったよ。そこまで言うなら、ありがたくご馳させてもらうとするかな」
「やった! じゃあ、夜のに、駅の改札のくで待ちわせね。おの予約は全部私に任せて!」
嬉しそうに頬をバラに染め、目を輝かせて私を見げる真央の顔は、両親をくしたあののしそうな表からしも変わらない、い妹のままだった。私はわず目を細め、から微笑んだ。
迎えた翌、私は朝からどこかそわそわしてしまい、仕事も元がしだけ落ち着かなかった。
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職の同僚たちにも「おい岡田、今はなんだか顔がニヤけてるぞ。まさかデートか?」なんてやかされるほどだった。
仕事の定をし過ぎた頃、私は急いで作業着から私に着替え、指定された駅の改札へと急いだ。
駅の改札のには、すでに真央が待っていた。
「お兄ちゃん、こっち、こっち!」
真央は私を見つけると、嬉しそうにきくを振った。今の真央は、いつものスーツ姿とは違い、品でしっぽいワンピースにを包み、いつもよりほんのりとお化粧をしていた。
「待たせたか、真央?」
「ううん、私も今来たところ。じゃあ、こっか!」
真央に促されるまま、私たちは駅の賑やかな通りから本裏に入った、静かなへと歩いてった。
分ほど歩くと、歴史をじさせるなの引き戸と、品の良い簾がかかった、いかにも敷居のな構えの寿司が見えてきた。
「ここ……か?」
「うん。ここ、すごく評判が良くて美しいんだよ」
私たちが内にを踏み入れると、はの美しいカウンター席が数席あるだけで、お世辞にも広いとは言えない品な空だった。けれど、そこには級と、職のこだわりが漂う静かで落ち着いた空気が満ちていた。
壁に掛けられたお品きの札には、値段の文字が切かれていない。いわゆる、見さんお断りとは言わないまでも、それなりの覚悟がいりそうな本格な戸寿司のだった。