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"他人の家で父親ごっこをする夫" 第7話

【07】 「どうして誰もらないって、勝に決めたの?」

静まり返ったリビングに、段ボールからこぼれ落ちた具が転がる乾いた属音だけが響いた。

「……ゆ、由美……」

雅の喉から、掠れた空気のような声が漏れた。

私を呼ぶその声には、度も向けられたことのないような、剥きしの怯えが混じっていた。

千鶴さんは異様な空気を察したのか、慌ててちがり、遥の肩を抱き寄せた。

「あ、あの……遥、のおまでジュース買いにきましょうか。おじちゃんたち、お話しがあるみたいだから」

「えー、でも私、由美おばちゃんとお話ししたい――」

「いいから、ほら、くわよ」

千鶴さんは遥のを引くと、逃げるように玄関をてった。

バタンとアルミのドアが閉まる音が、この狭い部にきりで取り残された図だった。

雅はに散らばったドライバーやペンチを拾おうともせず、蒼な顔のままち尽くしていた。

「……なんで、ここが分かったんだ」

それが、週失踪し、嘘をつき続けた夫の第声だった。

「カメラのシール。それと、あなたの昔の帳」

私は折りたたみ子からちがらなかった。ちがれば、膝の震えが見してしまうからだ。

元のコップのめかけたお茶を見つめたまま、静かに言葉を紡いだ。

「関張、嘘だったのね。休を使って、ここで週ずっと引っ越しの伝いをしていたの?」

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「……ああ。悪かったよ、嘘ついたのは。でも、千鶴さんが急に野にくことになって、男がないからって泣きつかれて……お、仕事忙しいだろ? こんな町の古いのゴタゴタに巻き込んだら悪いとって、言えなかったんだよ」

言い訳が、流れるようにから零れ落ちていく。

どこまでも「おへの配慮だった」という体裁を取り繕おうとするその卑屈さに、吐き気がした。

「巻き込んだら悪い?」

私は顔をげ、夫の目を真っ直ぐに見据えた。

「じゃあ、この子は? あのケトルは? あの本は? 私たちが緒に暮らしているから、私のらないうちに持ちされたあの物たちは何なの?」

雅の線が、部のあちこちに散らばる「証拠」を追って激しく泳いだ。

「それは……ただの用品だろ。うちにあっても使ってなかったじゃないか。ケトルだってお、しいの欲しがってたし、子だってベランダに放置されて埃かぶってた。捨てるくらいなら、困ってるに譲った方がいいとって……」

「じゃあ、あのウサギは?」

私の声が、く震えた。

ソファのに置かれた、汚れた黄いウサギを指差す。

「、私が必に探していたとき、あなた何て言った? 『おが自分で捨てたんだろ』って笑ったわよね。私の母が、学にがるときに買ってくれた、たったつの形見みたいなものだったのに」

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雅はをもごもごさせ、ばつが悪そうに線を落とした。

「……あれは、その……遥ちゃんが、両親が婚したばかりで毎晩泣いててさ。何かできるぬいぐるみが欲しいって千鶴さんに相談されて……納戸の奥にあったのをいしたんだ。お、もう何も触ってすらいなかっただろ? になってウサギのぬいぐるみなんて、持ってても仕方ないじゃないか」

「仕方ない?」

「ああ。放っておいても、誰もらないものだったんだから――」

「雅!」

私の声が、狭い部の空気を切り裂いた。

普段、声を荒らげることのない私の叫びに、雅がビクッと肩をねがらせた。

「どうしてあなたが、『誰もらない』って勝に決めるの?!」

握りしめた拳の爪が、のひらにい込んで痛かった。

「私が毎抱いて寝ていなかったら、らないことになるの? 私が『返して』って声で泣き叫ばなかったら、に勝にあげていいゴミになるの?!」

「由美、声がきいよ、所迷惑だろ……」

「ぬいぐるみだけの話じゃない!」

私はちがり、夫の胸元へ歩踏み込んだ。

「あなたがこので過ごしたも、誰かに向けていた優しさも、全部そうよ! 私が『にいて』って縋り付かなかったから? 『伝って』って泣き言を言わなかったから? 言われなきゃ分からないの?! 黙って活を支えているには、何もらないって、そうやって勝に切り捨ててきたの?!」

雅は顔面を気にし、言葉を失ってずさりした。

その背が、積みがった段ボールにぶつかった瞬――。

ガチャリ、と玄関のドアが乱暴にく音がした。

続いて、く引きずるような音と、酒の匂いを帯びた苛ちの籠もった声が響いた。

「おい、ばあさん! 煙銭どこに置いたんだよ――」

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