"他人の家で父親ごっこをする夫" 第6話
【06】 「由美さんはでも全部できるだから」
自していた?
夫が、私の料理を、の子どもに?
混乱で元がぐらつく私を余所に、千鶴さんは「ほら遥、ご挨拶なさい」と孫のを優しく撫でた。
「由美さん、ち話もなんですし、どうぞそこに腰掛けてくださいな。段ボールだらけで座布団もせなくて申し訳ないけれど」
勧められたのは、まさにがから持ちられたあのモスグリーンの折りたたみ子だった。
私は膝の震えを隠すように、い布に腰をろした。
千鶴さんは使い捨てのコップに、あのがのケトルで沸かしたお茶を注ぎ、私のに差しした。
湯気と共にちる番茶のりが、ひどく滑稽で、ひどく残酷にえた。
「雅さんにはね、本当にいくら謝してもりないくらいなんです」
千鶴さんはを膝のに揃え、慈しむような目で部を見渡した。
「うちの主がくなってから、もうになりますでしょう? 息子の亮介は、ご覧の通り頼りなくてね。数に婚して遥を引き取ったはいいけれど、仕事も続きしなくて……。が壊れたって、網戸が破れたって、男のないがはどうにもならなかったんです」
私は黙ってコップを見つめていた。
「そんなとき、昔隣にんでいたご縁で、雅さんがたまたま通りかかって声をかけてくださってね。
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それからですよ。球の交換から、遥の自転のパンク修理、果ては亮介が自暴自棄になって暴れたときの仲裁まで……雅さんがぜんぶ、引き受けてくださったんです」
「……全部、ですか」
「ええ。まるで、本当の族のように寄り添ってくださって」
千鶴さんは目を潤ませ、私の元にそっと自分のシワだらけのをねてきた。
そのの温もりが、私には焼けた鉄のようにく、耐えがたかった。
「私、ずっと申し訳なくっていたのよ。由美さんという派な奥様がいらっしゃるのに、こんなお寄りと壊れかけの族のために、事なご主のおを奪ってしまって……」
「……」
「でもね、雅さんがいつも仰るのよ」
千鶴さんは、底私を称えるような、点の曇りもない笑顔で言った。
「『由美はしっかりしただから、何でもで完璧にこなせるんです。俺がにいたって、球つ換える番すらないんですよ』って。『だから、お母さんたちに頼りにされると、俺もまだ役にてるんだってえるんです』ってね」
胸の奥で、何かが音をててひび割れた。
私が、何でもでできるから?
私が番を与えなかったから?
違う。
球の替えを頼んでも「今度な」と回しにされ、暗がりで活するのが嫌だから私が脚に乗ったのだ。
漏れの修理を頼んでも「業者呼べば?」と投げされたから、私が管理会社に連絡したのだ。
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母が倒れたとき、相談しても「おののことだろ」とたく背を向けられたから、私がで仕事をやりくりして病院へ通ったのだ。
私がいからでやったのではない。
彼が何もしてくれないから、活を維持するために、でち続けるしかなかったのだ。
それを彼は――「妻が完璧だから俺は必とされていない」という美しい被害者の物語にすり替え、このに持ち込んでいたのか。
「お母さん、ガムテープもう巻どこにある――」
そのとき、廊の奥の引き戸がき、作業着姿の男が段ボールを抱えて入ってきた。
首にタオルを巻き、額に汗を浮かべたその顔。
夫の、雅だった。
私と線がぶつかった瞬、雅のきが完全に凍りついた。
見かれた瞳から、血の気が気に引いていくのがにとるように分かった。
元から力が抜け、抱えていた段ボールが、ドサリと鈍い音をてて畳のに崩れ落ちた。