"他人の家で父親ごっこをする夫" 第2話
【02】 「そのウサギ、どうしてそこにあるの?」
ウサギのの付け根には、私が昔ほつれを直したときの緑の刺繍糸が、今もそのまま残っていた。
見違いであるはずがなかった。
女が抱いているのは、違いなく私のウサギだった。
もできないまま夜がけた。
リビングのテーブルのに置かれた族写真は、朝のたいを浴びても、消えることのない現実としてそこにあった。
午分。
スマートフォンの画面を無で更し続けていた指が止まった。
雅のLINEアカウントに、通話の呼びしマークが点灯した。
源が入ったのだ。
私は通話ボタンを押さなかった。
「今どこにいるの?」とも打ち込まなかった。
ただ、スマートフォンのカメラでテーブルの族写真を撮り、ウサギのの緑の糸がはっきりと見えるように拡した画像を添付した。
そして、くだけ添えて送信した。
『そのウサギ、どうしてそこにあるの?』
画面を見つめる。
臓がの奥で鐘を打っていた。
秒、秒、秒。
わずか秒らずで、メッセージの横に「既読」の文字がついた。
読んだ。
しかし、返信は来ない。
入力を示すドットの波が画面の隅に現れては、消えた。
また現れては、数秒で消える。
何かを取り繕おうとして、言葉が見つからず、打っては消しているのだ。
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分が過ぎ、分が過ぎた。
画面は完全に静止し、ドットすら表示されなくなった。
ただの既読無。
それが、夫のした最初の答えだった。
もしこれが悪質な悪戯や成写真なら、「なんだこれ、誰から送られてきた?」と即座に話をかけてくるはずだ。
何も言えないということは、彼自がこの写真のを、そしてウサギの正体を完全に理解している証拠だった。
私はスマートフォンの源を落とさず、ちがった。
相が逃げるなら、待っているつもりはなかった。
昨夜の茶封筒をもう度引き寄せる。
を隅々まで調べると、写真が入っていた透なフィルムの端に、さなシールが貼られていた。
町の個経営のDPEショップのロゴ。
『カメラの〇〇 荒川区町』
荒川区。
結婚、雅が独代に暮らしをしていたアパートがあっただ。
、私たちがりったばかりの頃、度だけ遊びにったことがあった。
私は寝へ向かい、雅の斎の引きしをけた。
几帳面な雅は、スマートフォンに移するの古いアドレス帳や帳を、処分できずに引きしの奥へしまい込む癖があった。
何冊かの帳をめくる。
、独代のページ。
町のアパートの所の横に、乱雑なメモきが残されていた。
『アパート隣・佐伯(千鶴)』
固定話の番号が、黒いボールペンで控えられていた。
写真の側に座っていた、あの代半ばの女性の穏やかな顔が脳裏に蘇る。
佐伯千鶴。
私は自分のスマートフォンを取りし、震える指先でその局番から始まる番号をプッシュした。
呼びし音が、静かな寝に々と鳴り響く。
回、回、回。
諦めて指をそうとしたその瞬、カチャリと受話器ががる音がした。
「……はい、佐伯でございます」
し掠れた、しかし落ち着いた初老の女性の声だった。