"父親欄の黒い斜線" 第13話
【13】「母さんを呼ぶなら、この話はなしよ」
復職初週の曜。
会社の会議で、私は司から枚の張命令を差しされた。
「佐藤さん、復帰々で申し訳ないんだが、関支社のシステム移に伴う現研修、泊で入ってもらえないだろうか」
課は申し訳なさそうに眉をげていた。
勤務での復職を選んだ私に、配慮がなかったわけではない。
ただ、育休にそのシステム設計を担当していたのは私だけだった。
「もちろん、お子さんのことがあるなら断ってくれて構わない。ただ、今回のプロジェクトを完遂できれば、来期のリーダー昇格の推薦を確実にせる」
臓がねがった。
母親になったからといって、積みげてきたキャリアを捨てたかったわけではない。
だが、以の私なら、こので即座にをげて辞退していただろう。
『無理です。私がいないと、娘の命が回りませんから』と。
その夜、私は駅のカフェで拓也と向かいっていた。
コップの茶を両で包み、じっと夫の目を見る。
「来週の曜から曜まで、関支社への張が入ったの。泊よ」
「泊……?」
拓也のが止まった。
帳をいていた彼の線が、予定表の箇所に釘付けになる。
「……ちょうど曜の午、うちの部署の最コンペなんだ。全役員が席する最終プレゼンで、俺がメインスピーカーを担当することになってる」
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予通りの衝突だった。
お互いの仕事の王が、よりによって同じ週になっていた。
以の拓也なら、違いなくこう言ったはずだ。
『おが断れよ。育休けの女が、なんでそんな無茶するんだ』と。
しかし、拓也はをつぐんだ。
夜の児科で、の陽菜を抱きしめて震えていた記憶が、彼の喉元に引っかかっているのが分かった。
「……母さんに頼めば、昼の数は見てくれるかもしれない」
拓也が絞りすように呟いた。
私は即座に、たい声で遮った。
「お義母さんを呼ぶなら、この話はなしよ」
拓也が顔をげる。
「私はね、あなたの母親に陽菜を預けたいんじゃないの。この子の父親であるあなたに、託せるかどうかを聞いてるの」
「でも、昼の仕事はどうするんだよ! 保育園の迎えだって——」
「保育園の通常保育はまで。延を使ってもが限界よ。それまでに誰が仕事を切りげてるの? がたら誰が迎えにくの?」
私はテーブルのに、帳を置いた。
「お義母さんに頼れば、あなたは痛みを負わずに済むわ。でもそれは、あなたが父親としての責任を引き受けたんじゃない。ただ別の女性に押し付けただけよ」
拓也の喉が、ギリリと音をてた。
彼は帳の『最終プレゼン』の文字を、穴が空くほど見つめていた。
父親になるということは、美咲の嫌を取ることではない。
自分の都の良いだけ抱っこすることでもない。
自分のの優先順位を、容赦なく組み替えることだ。
秒の沈黙の、拓也がゆっくりと帳を閉じた。
「……分かった」
「引き受けるの?」
「俺がやる。母さんは絶対に呼ばない。朝の送りも、夜の迎えも、寝かしつけも、全部俺でやる」
拓也の瞳に、逃げを自ら断ち切ったのが宿っていた。
曜の朝。
私は京駅のホームで、幹線に乗り込んだ。
抱っこ紐のない私の両肩は、信じられないほど軽かった。
けれど、胸の奥には、鉛のようない緊張が居座り続けていた。