みかん小説
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"父親欄の黒い斜線" 第11話

【11】 夜2、38.9度の子音

計の針が、夜半を回った頃だった。

ベッドに寝かせていた陽菜が、それまで聞いたこともないような、々しくかすれた声で「ふぇ……ふぇ……」とぐずり始めた。

拓也はね起き、ベビーベッドを覗き込んだ。

「陽菜……? オムツか? それとも喉が渇いたか?」

さな額に触れた瞬、拓也の指先に焼きつくようなさが伝わってきた。

「……あつっ!?」

慌てて気をつける。

蛍灯のでわになった娘の顔は、林檎のように真っ赤に気し、呼吸が浅く荒くなっていた。

ハア、ハア、とさな胸が激しくしている。

拓也の臓が、鐘を打ち始めた。

「嘘だろ……なんで……」

引きしから子体温計を引っ張りし、陽菜の脇のに差し込んだ。

ピピピピ、ピピピピ。

子音が酷に鳴り響く。

液晶画面に表示された数字を見て、拓也の界が歪んだ。

『38.9℃』

「さんじゅうはちど……きゅうぶ……!?」

のが真っになった。

ならインフルエンザで寝込むようなだ。

ヶに満たない乳児が、こんなをして丈夫なのか?

脳に障害が残るんじゃないのか? 痙攣を起こしたらどうする?

が刻みに震え、スマートフォンのロック解除画面で何度も誤入力を繰り返した。

通話履歴の番にある名。

『美咲』。

親指が、緑の発信ボタンのに吸い寄せられる。

——話しろ。

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今すぐ話して、「陽菜がをした、どうすればいい!?」と叫べ。

美咲ならっているはずだ。彼女ならで駆けつけて、病院へ連れてってくれる。

俺は分からない。薬の所も、夜診療の所も、何つらないんだから——。

「……っ」

拓也の指が、画面の数ミリで静止した。

『私はね、あなたが陽菜をしてるかどうかを疑ってるんじゃないの。単に、あなたがこの子の毎に割くを持っていないという現実を処理しただけ』

料亭の席での美咲の氷のような声が、鼓膜の奥で蘇る。

『たったの晩よ。誰かに用されたミルクとお湯を使って、子どもをかしておいただけ』

ここで美咲を呼べば、すべてが終わる。

「やっぱり、あなたには無理だったのね」と宣告され、度と陽菜ときりで過ごすは与えられないだろう。

それは親権を失うとか、婚されるとか、そういう法な話ではなかった。

『俺は、この子の命を引き受ける覚悟のない、ただの役たずだ』と、自分自に烙印を押すことになるのだ。

拓也は歯をいしばり、美咲への発信を取り消した。

代わりに、美咲がリュックの底に入れておいた透なポーチを引っ張りした。

には母子帳、保険証、乳幼児医療証、そして冊の学ノートが入っていた。

表には美咲の几帳面な字で、『緊急・体調良の対応順』とかれていた。

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拓也は震えるでノートをめくった。

『ヶ未満の38度以の発は、細菌染の能性があるため、夜でも即座に受診すること』

『まず#8000(児救急話相談)へ話。症状を伝える』

『受診先の夜救急:都児総医療センター、または部夜児初期診療所』

『持ち物:母子帳、保険証、医療証、替えのオムツ3枚、おしりふき、着替え2組、授乳用具、解用の濡れタオル』

文字文字が、暗を照らす松のように拓也の目にび込んできた。

迷っている暇はなかった。

拓也は固定話を取り、#8000へダイヤルした。

護師に陽菜の齢、現の体温、識の無をで伝える。

「今すぐ夜初期診療所へ向かってください。タクシーを呼べますか?」

「はい、すぐきます!」

話を切ると同に、タクシー配アプリを起した。

迎位置を自宅に指定し、ノートにかれていた荷物をつずつリュックへ放り込む。

狂する陽菜をのバスタオルで包み、抱っこ紐へ滑り込ませた。

へると、え切ったの夜が容赦なく吹き付けてきた。

拓也は自分のダウンジャケットのをきくき、陽菜の体を包み込むようにジッパーをげた。

到着したタクシーの内で、拓也はずっと娘のさな背にを当てていた。

トク、トク、トクと、信じられないほどの速さで脈打つ命の鼓。

「頑張れ、陽菜……パパがついてるから。絶対に丈夫だからな……」

その言葉をにした瞬、拓也の目から、理由の分からない涙がポロポロと溢れ落ちていた。

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