みかん小説
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"父親欄の黒い斜線" 第9話

【09】 15分おきに更する、既読のつかないトーク画面

別居が始まってから、週が過ぎた。

居の1LDKは、最限の具しか置いていない。

けれど、ここには「く帰れ」「息が詰まる」と私を責めてる空気はどこにもなかった。

陽菜が泣いても、誰かの嫌を窺う必がない。

それだけで、張り詰めていた神経がしずつ解けていくのをじていた。

だが、曜の夕方になると、私の胃の奥は鉛をみ込んだようにくなった。

公正証を作成するにあたり、弁護士を通じて交わした暫定なルール。

『毎週曜の夜から曜の夕方まで、父親である拓也が単独で陽菜を養育・監護する』。

午。

駅の改札で、抱っこ紐から陽菜をろした。

受け取りに現れた拓也は、以のような威圧や嫌さを消し、どこか張った顔で私から娘を受け取った。

「……ミルク、回分と着替え、母子帳は全部このリュックに入ってる」

「ああ。確認するよ」

「は平。夕方の乳のミルクは百んだわ」

「分かった。……じゃあ、、予定通りにここに」

拓也は陽菜をぎこちなく抱き直すと、に改札を抜けていった。

で戻ったマンションの部は、気なほど静まり返っていた。

いつもなら陽菜の泣き声と、おもちゃのガラガラの音で満たされているはずの空。

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スリッパの音だけが、やけにきく響く。

私はソファに腰をろし、スマートフォンを握りしめた。

刻は午。

——ちゃんと駅から歩けたかしら。

——途でぐずって、抱っこ紐から落としそうになっていないだろうか。

画面を点灯させ、LINEをく。

拓也からの連絡はない。

こちらから「無事着いた?」と打ち込みそうになり、指を止めた。

駄目だ。

ここで私がをせば、責任の所が曖昧になる。

「おが指示した通りにやったのに」という言い訳を、彼に与えてはならない。

午。

画面を更する。着メッセージはない。

——お呂に入れたかしら。湯加減は度にしただろうか。にお湯が入って炎になったらどうしよう。

午。

爪を噛みそうになるのを必で堪えた。

話をかけたい。今すぐ受話器を取って、「陽菜は寝た?」と問い詰めたい。

その、ふと洗面所の鏡に映った自分の顔を見て、息が止まった。

鬼のような形相で、画面を睨みつけている女がいた。

私は、拓也に父親としての責任を引き受けてほしいと望んだはずだった。

それなのに、いざ彼が子どもを抱えてった瞬、今度は「自分以のが陽菜を触ること」への激しい恐怖と独占欲に苛まれている。

『私がいなければ、この子はきていけない』

そうい込むことで、私は自分自の価値を保とうとしていたのではないか。

に任せられないのは、拓也への信だけではない。

私自が、母親という役割に執着し、責任を放す恐怖に怯えているのだ。

スマートフォンを伏せ、テーブルの端に置いた。

たい麦茶を喉に流し込む。

信じるのではない。試すのだ。

彼がのとして、命のさに耐えられるかどうかを。

その覚悟を試されているのは、私の方でもあった。

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