"父親欄の黒い斜線" 第8話
【08】 朝8、サカイのトラックが閉まる音
それからの、拓也のは目に見えて変わった。
保のためか、それとも私の言葉にプライドを々にされたからなのか、拓也は必だった。
ネットで育児を読み漁り、曜には本当に休暇を取得した。
そして、私が料亭の席で突きつけた『認保育園の事見学と面談』に、でスーツを着て参加したのだ。
母親ばかりが集まる園のホールで、肩の狭いいをしながらパイプ子に座り、メモ帳に園の話をき殴る拓也の姿を、私はそのにいなくても像することができた。
曜の夜、拓也はダイニングテーブルのに、枚の類を誇らしげに置いた。
そこには、保育園の見学参加証と、園からの受領印がはっきりと押されていた。
「美咲、ってきたぞ。通園ルートも確認した。ベビーカーだと駅ののエレベーターが混むから、の通を使った方が分い。アレルギー除の続きも聞いてきた」
拓也は縋るような目で私を見た。
「俺、変われるよ。変わってみせるから。だから、曜のトラック、キャンセルしてくれ。頼むよ」
私はそのメモと証を見つめた。
字は乱れ、焦りが滲んでいたが、嘘偽りなく彼自がを運んだ証拠だった。
「……ありがとう。この類は助かるわ」
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私は類をクリアファイルに収めた。
拓也の顔に、パッと希望のが差した。
「じゃあ……!」
「でも、ていくわ」
は瞬で消えり、拓也の顔は絶望に歪んだ。
「なんでだよ……! 言われた通りやっただろ!? 病院も調べるし、保育園も見にった! これ以、俺にどうしろって言うんだよ!?」
「拓也、あなたがいたのは素らしいことよ。でもね、それは『父親として当たりのこと』を、今さらつ始めただけに過ぎないの」
私は静かに告げた。
「あなたが度を取ったからといって、私が陣痛のででタクシーに乗った記憶は消えない。あなたが保育園を見にったからといって、夜泣きする娘を放置してあなたが栓をして寝ていた事実は消えないの」
「過のことをネチネチ言うなよ! これからの話をしてるんだろ!?」
「これからよ。だから私はていくの。あなたがこの先、私の嫌を取るためじゃなく、本当にの父親としてきられるかどうか、私は別の所から見極める」
そして、運命の曜の朝が訪れた。
午ちょうど。
マンションのエントランスに、い引越しトラックが横付けされた。
作業員名が際よく部に入り、梱包済みのダンボールを次々と運びしていく。
私の私、仕事具のパソコン、陽菜のベビーベッド、オムツのストック。
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部から私の気配が消えていくたびに、リビングが異様に広く、寒々しくじられた。
残されたのは、拓也の趣のオーディオ器と、彼がで使うにはきすぎるダイニングテーブルだけだった。
「美咲さん、すべての荷物の積載が完しました」
作業リーダーの声に、私は頷いた。
陽菜を抱っこ紐に収め、バッグを持つ。
拓也は玄関の壁に背をもたれさせ、幽霊のように青ざめた顔でち尽くしていた。
止める気力すら、もう残っていなかった。
「鍵は、ポストに入れておくわね」
私が靴を履き、ドアノブにをかけた、拓也が掠れた声で呟いた。
「……本当にっちゃうんだな」
「ええ」
「俺……これから、どうすればいいんだよ」
私は振り返り、拓也の虚ろな瞳をまっすぐに見据えた。
「週に回、陽菜を預けるを作るわ。調の類は弁護士を通じて送る。……逃げずに、父親を続けなさい」
私は歩、へ踏みした。
へりると、作業員がトラックの部ドアを勢いよく閉めた。
バタンッ!
く鋭い属音が、朝の宅に響き渡った。
それは、私たちが築いてきた『夫に依する族』という虚構が、完全に断ち切られた音だった。
配していたタクシーに乗り込むと同に、私のスマートフォンがさく震えた。
見ると、拓也のLINE通が表示されていた。
『今夜、そっちのマンションにってもいいか?』
私は画面を伏せ、源を切った。
窓を流れる見慣れた並みが、の青空のでざかっていく。
本当の試練は、ここからだった。