"父親欄の黒い斜線" 第4話
【04】 7に引き渡される、見らぬ鍵
「もういい! わかったよ!」
拓也が自暴自棄になったように鳴り散らした。
「そんなに責めることないだろ! りないところがあったなら謝るよ! 今から直せばいいんだろ!? これからはく帰るように努力するし、週末はオムツだって替えるよ! それでいいだろ!?」
『伝う』『努力する』。
どこまでも、育児を妻の領分だと見なしたでの、恩着せがましい譲歩。
私はため息すらなかった。
もう、その言葉に傷つく段階は疾うに通り過ぎていた。
「直さなくていいわ」
「……は?」
「もう、あなたに無理して活を変えてもらう必はないの」
私はファイルの最の枚を抜き取った。
これまでの政類とは異なる、産業者の社印が押された類。
『賃貸宅賃貸借契約』。
それを、拓也の目のに滑らせた。
拓也がその類を凝する。
契約者氏名——私の単独名義。
物件所——私の復職予定のオフィスと、申請した保育園から徒歩圏内の1LDKマンション。
敷、礼、仲介数料、賃——私の独代の貯から全額決済済み。
そして、入居予定。
そこには、はっきりと刻まれていた。
『契約始:』
今から、ちょうどだった。
「……これ、何だ?」
拓也の声が、今度こそ完全に裏返った。
「見ての通りよ。来週の曜、私と陽菜はあのをて、ここへ引っ越すわ」
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「は……? 引っ越す……? お、何言って……をるって、別居するってことか!?」
個のが騒然となった。
親戚の何かがちがり、義母は子から転げ落ちそうになりながら鳴をげた。
「ちょっと! 美咲さん、あなた正気なの!? うちの孫を連れててくだなんて、そんな勝な真似が許されるとって——」
「許すも許さないも、私の志です」
私はちがった。
抱っこ紐をしっかりと装着し、陽菜を自分の胸のに抱き寄せる。
娘の柔らかな温もりが、私の胸骨を通して伝わってきた。
「のの命名札、派ですね。どうぞ、お義母さんと拓也さんで切に保管してください」
私は命名札を瞥もしなかった。
「でもね、この子がどこで眠るのか、誰が夜に体温を測るのか、誰が仕事を調して病院へるのか。その具体な活のに、あなたたちの所はありません」
「待てよ! 美咲、待てって!」
私が引き戸にをかけると、拓也が血相を変えて畳をうように追いかけてきた。
私のコートの裾を、みっともなく掴む。
「なんでだよ……! たかがヶちょっとがちだっただけで、そこまで極端なことするなよ! 俺たち族だろ!? やり直せるだろ!?」
私はち止まり、拓也のを見ろした。
そのは震えていた。
だがそれは、族を失うしみではない。
『いい父親』という記号を奪われ、親戚ので恥をかかされたことに対するパニックだった。
私は拓也の指を、本ずつたくした。
「よ」
「……え?」
「の朝、引っ越し業者が来るわ。荷物は私のものと陽菜のものだけを持っていく」
私はまっすぐに拓也の瞳を見た。
「あなたがただ『父親という名』が欲しいだけのなのか、それともこの子の毎に自分のを差しす覚悟があるなのか。……あとで、証できる?」
拓也は息を呑んだまま、縛りに遭ったようにけなくなった。
私は度も振り返ることなく料亭の個をた。
背で義母の切り声と、拓也が私の名を呼ぶ絶叫が響いていたが、自ドアがくと同に、たいの夜がそれらをすべて吹き消していった。