"嫌なら出ていけと言った夫へ" 第15話
【15】「でも、私はこのには戻らない」
修の笑顔が、途で凍りついた。
「……え?」
「を売らないと決めたのは、あなたのためじゃないわ」
私はテーブルのの自分の荷物をくまとめ、ちがった。
背筋を伸ばし、ソファーに座る夫を徹に見ろす。
「板をてた、私のに復讐がなかったと言えば嘘になるわ。『ていけ』と言われた屈辱を、あなたにも同じようにあわせてやりたかった。の言で、自分の元が消える恐怖を教えてやりたかった」
「理恵、それは……」
「でもね、あなたを罰するためだけに、私ののいや、子どもたちの育った記憶まで赤のに売り払うのは、馬鹿げていると気づいたのよ。だから売らない。それだけよ」
私はバッグの持ちをしっかりと握り直した。
「そして――私は今、このには戻らないわ」
「な……何だって!?」
修がび起きるようにちがった。
直も、も、目を見いて私を見つめている。
「を売らないなら、なぜ戻らないんだ!? もう売却の危はっただろう! 元通り、ここで暮らせばいいじゃないか!」
「元通り?」
私は乾いた笑いを漏らした。
「元通りって、何? また私があなたの顔を伺い、の事を作り、誰を呼ぶにもあなたの許を乞う活に戻れと言うの? そんな活に戻るくらいなら、このごと叩き壊した方がましよ」
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「理恵……!」
「これからヶ、私は駅のウィークリーマンションを借りて、で暮らします」
私の宣告に、部が息を呑んだ。
「ヶの、このには修さん、あなたでみなさい」
「お、俺で……!?」
「ええ。掃除も、洗濯も、々の買いしも、事の支度も、全部自分のでやりなさい。庭の雑を抜き、壊れた蛇を直し、ゴミの分別をしなさい。――あなたが威張り散らしてきた『俺の』が、体誰のどんな労働によって維持されていたのか、そのつでいりなさい」
修の顔から、完全に血の気が引いていく。
定まで会社との往復しかせず、お茶杯すら自分で淹れたことのない男だ。
広すぎる階建てので、きりで活を回すことがどれほどの労働か、像すらついていない。
「そして、子どもたち」
私はに線を向けた。
「奈央。実に逃げ込むのはやめなさい。お姉ちゃんの部でも、私の部でもいいから、まずは自して夫と向きいなさい。どうしてもこのに来るは、必ず事にお父さんに連絡して、解を取りなさい」
奈央がさく頷いた。
「直も、も同じよ。『実』だからといって、親の都も聞かずに鍵をけてがり込むのは輪際禁止です。ここは誰かの独裁国でもなければ、になった子どもたちが都よく甘える避難所でもないの」
子どもたちは誰も反論しなかった。
母親の言葉の裏にある、あまりにも正当な現実のみを受け止めていたからだ。
「ヶ」
私は玄関へ向かって歩きしながら、最に振り返った。
「ヶ経ったら、もう度話しいましょう。別居を続けるか、正式に婚してこのを法に財産分与するか。あるいは――対等なとして、しい暮らし方を模索するか」
「理恵、待ってくれ! 理恵!」
修がすがるようにを伸ばしてきたが、私はそのをすり抜け、玄関のへりた。
靴を履き、ドアノブにをかける。
背で、修が力なくに崩れ落ちる気配がした。
「じゃあね、みんな」
私は度も振り返らずに、いドアをけた。
初の爽やかなが、私の頬をよく撫でていった。