"嫌なら出ていけと言った夫へ" 第10話
【10】「ここから先は、全員で話しいましょう」
午9。
相沢のリビングには、数ぶりに族全員が揃っていた。
オーク材のきなダイニングテーブル。
かつて私の両親が贈ってくれたそのテーブルを囲んで、苦しい沈黙が落ちていた。
座――いつも修が当たりのように座っていた席には、誰も座っていない。
私はあえて、その席を空けたまま、座のパイプ子を引いて腰をろした。
修は腕を組み、ソファーの端にく腰掛けている。
その顔には、隠しようのないと警戒が張り付いていた。
「……話しいって、何だよ」
沈黙を破ったのは、男の直だった。
目のには、修が昨夜持参した「定期預証」のコピーが置かれている。
「父さんが千万すって言ったんだろ? それで母さんのを清算して、名義を父さんに戻せば、は売らなくて済む。奈央もここにめる。それでいいじゃないか」
直の言葉に、修がわずかに顎をげた。
『ほら見ろ、息子は俺の方だ』と言わんばかりの線。
私は首を横に振った。
「おで解決する話じゃない、と昨言ったはずよ」
「じゃあ何なんだよ!」
直が苛ちをわにして声を荒らげた。
「母さんはただ、父さんを困らせたいだけなのか!? 父さんがローンを返してきたのは事実だろ! 定したばかりの父親を、法律の名義本で追い詰めて、板てて恥をかかせて……母さん、し残酷すぎないか!?」
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「直、黙りなさい!」
が激して割り込んだ。
「あんたは何も分かってない! お父さんがこれまで、お母さんに何を言ってきたかってるの!? 『嫌ならていけ』『ここは俺のだ』って、ずっとお母さんのを否定し続けてきたんだよ!」
「だからって、を売る必はないだろ! 俺たちの実だぞ!」
「あんたにとっての実でしょ! お母さんにとっては、いつ追いされるか分からない牢だったんだよ!」
子どもたちの罵りいが、リビングに響き渡る。
奈央は翔太のを塞ぎ、ただ涙をこぼしていた。
修はソファーからかない。
子どもたちが自分のために争っている姿を、どこか「父親の威厳」を取り戻すための盾のように眺めているだけだった。
「全員、静かにしなさい」
私の澄んだ声が、言い争いを断ち切った。
私はテーブルのに、枚のレポート用を広げた。
そこには、今朝、私がきした箇条きのルールが並んでいた。
「奈央。あなたがここに滞できるのは、最でヶ。そのに別居の続きと、しいアパートを探しなさい」
奈央が息を呑み、私を見つめた。
「甘えは許さないわ。費と費として、に万円を入れなさい。翔太の夜泣きがあるなら、階のを使い、夜はリビングにりてこないこと」
「……うん。分かった」
奈央がしっかりと頷いた。
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「そして、修さん」
私の線が、ソファーの男を捉えた。
「あなたはこの決定に、拒否権を持たないわ。『俺のだから入れるな』という言葉は、今切禁止よ。こので暮らす以、あなたは奈央の活を邪魔せず、自分のの回りのことは全て自分でやること」
「な……!?」
修の顔が、りで真っ赤に染まった。
ソファーからね起きるようにちがる。
「ふざけるな! なぜ俺がそんな指図を受けなきゃならん! 活費を入れろ? 事を自分でやれ? 俺はこのを支えてきた黒柱だぞ! 定して、自分のでくつろぐ権利すらないというのか!」
「ここは、あなただけのじゃないと言っているの」
「おのでもないだろうが!」
修がテーブルをバンと叩いた。
「俺を庭から追いしたいのか!? おは最初からそれが目だったんだろう! 俺の退職を待って、定で肩を失った俺を狙い撃ちにして、子どもたちを方につけて俺を抹殺しようとしているんだ!」
被害妄に取り憑かれた男の叫びが、部に響き渡った。
その浅ましい姿を見つめていた直が、ふと、耐えきれなくなったように両でを抱えた。
そして、信じられないものを見るような目で、私を見つめた。
「……母さん」
直の声は、かすかに震えていた。
「母さん、つだけ教えてくれ」