みかん小説
本棚

"無償の介護係だった嫁" 第17話

【17】「お義姉さん、もし都が良ければでいいんだけど」

季節は巡り、半が過ぎた。

桜の季節が終わり、初の眩しい差しがを包み込んでいた。

私はヶにわたる集講座を修し、調剤報酬請求事務の民資格を取得していた。

今は駅のきな総病院のにある調剤薬局で、週に、医療事務のパートとして働いている。

いユニフォームにを包み、処方箋を受け取り、保険証を確認し、パソコンに点数を打ち込む。

自分の名で呼ばれ、自分の仕事に対して正当なが支払われる。

その当たりの活が、私には奇跡のように眩しかった。

曜の午。

パートのシフトを終え、更で私に着替えてスマートフォンを確認すると、義妹の由からLINEが入っていた。

以の由からの連絡といえば、

『今すぐ来て!』

『母さんが薬まないんだけど!』

という、方な鳴と命令ばかりだった。

だが、画面に並んでいたメッセージは、まったく違う文面だった。

『お義姉さん、お仕事お疲れ様です。

今度の曜の午って、もしかしてご予定空いてたりしますか?

もし都が良ければでいいんだけど、母さんの用の肌着と靴を買いにきたくて。

お義姉さん、母さんのサイズや好みの素材に詳しいから、もしがえばアドバイスをもらえたら嬉しいなとって……!

広告

もちろん、お仕事で疲れてたり予定があったら全然断ってね! そのは兄ちゃんとでってくるから!』

私はスマホの画面を見つめながら、わずふっと元を緩めた。

『もし都が良ければでいいんだけど』

『難しければ断ってね』

その置きのつに、この半で庭のに築かれた『しい距』が凝縮されていた。

あれから、がの活は決して絵に描いたような楽園になったわけではない。

健司は毎万円の介護費用を捻するために遣いを幅に減らされ、好物だったゴルフもやめた。

由も週に回、デイサービスのないに実へ通い、義母の部の掃除や洗濯を淡々とこなしている。

には由が「もう腰が痛い!」と愚痴をこぼし、健司が「俺だって仕事がきついんだ」と競りいをすることもある。

けれど、はもう度と、私に向かって「おがやれ」とは言わなくなった。

にを払い、自分たちのをかして初めて、は理解したのだ。

介護とは、誰かが無償で肩代わりすべき『親切』などではなく、

族全員が血を流しながら分けわなければならない『現実の代償』なのだと。

私は歩のでち止まり、由への返信を打った。

『曜の午なら空いているわよ。に駅のショッピングモールで待ちわせしましょう。

綿百パーセントできの肌着がセールになってたから、売りを案内するね』

送信ボタンを押すと、すぐに『ありがとう!! 助かります!!』とスタンプが返ってきた。

私はスマホをバッグにしまった。

私は義母を見捨てたわけではない。

今でも義母の好物はっているし、話し相にもなる。

曜には緒に買い物へき、を選んであげることもできる。

ただ、それは『召使いとしての義務』ではなく、

私の志で選んだ『族としての助け』だった。

境界線を引いたからこそ、私はようやく、義母や夫を憎まずに済むようになったのだ。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: