"無償の介護係だった嫁" 第12話
【12】「『にがいる』って、具体に誰のこと?」
「嫌よ……! 絶対に嫌!!」
の引き戸がガタガタと音をてていた。
壁にをつき、パジャマ姿の義母が、髪を振り乱してリビングの入りにっていた。
その顔は屈辱と恐怖で真っ赤に染まり、目には涙が溢れていた。
「お母さん、っちゃダメよ!」
由が慌てて駆け寄ろうとしたが、義母はそれを乱暴に払いのけた。
「施設になんてかないわよ! デイサービスなんて、ボケた寄りばかりの集まりじゃない! 私をあんなところへ放り込む気!?」
義母は震える指で見積を指差した。
「万!? なんでそんなを、赤のにくれてやらなきゃいけないの! に嫁も息子も娘も揃っているのに、にの世話を頼むなんて、ご所に恥ずかしくて顔向けできないわよ!」
義母はリビングのにへたり込み、胸を叩いて泣き叫んだ。
「健司……! 由……! おたち、親を捨てる気かい? 真奈美さん、あなたがいながら、私をのお呂に入れさせる気なの!? たい……みんなして私を追いそうとしてるんだわ!」
健司がオロオロと義母の肩を抱き、私に助けを求めるような線を送った。
「真奈美、母さんがああ言ってるんだ。に頼むのは母さんのプライドが許さないんだよ。族がいるんだから、なんとか庭内でやりくりできないか?」
広告
空気が張り詰めた。
岸さんは帳を膝のに置き、族の方を静かに見守っている。
由は唇を噛み締め、俯いたままかない。
私はちがり、に座り込んで泣く義母の正面へと歩み寄った。
そして、そのに膝をつき、義母と同じ目線のさになった。
「お義母さん」
私の声は、ひどく静かで、澄んでいた。
「『にがいる』って、具体に誰のことですか?」
義母の泣き声が、ピタリと止まった。
涙で濡れた目を瞬かせ、義母は息を呑んだ。
「健司さんのことですか? 健司さんはこの週で、会社でのを失いかけました。これ以介護を続ければ、退職するしかありません。健司さんが仕事を辞めて、あなたの介護をやればいいですか?」
「そ、それは……健司はの黒柱だし……」
義母が籠もる。
「じゃあ、由さんですか? 由さんは連の病で倒れかけ、ご主から婚を突きつけられています。由さんの庭を壊して、実に戻らせて、あなたの面倒を見させますか?」
「由に……そんな迷惑は……」
「なら、私のことですか?」
私は義母の瞳をまっすぐに見つめた。
「息子のキャリアも壊せない。娘の庭も壊せない。だから、番どうでもいい、血の繋がっていない嫁のをもう度差しせと、そうおっしゃっているんですか?」
「真奈美さん、そんな言い方……!」
健司が割って入ろうとしたが、私は鋭い線でそれを制した。
広告
「お義母さん。この万円がいとおいですか?」
私はテーブルのの見積を指差した。
「これはいんじゃないんです。これが、のをにかすために、社会が必とする正当なコストなんです。過の、この族がその費用を払わずに済んでいたのは、私が自分のと、健康と、未来を、タダで差しし続けていたからですよ」
義母の唇が刻みに震えた。
反論の言葉を探すようにをパクパクとかしたが、声はなかった。
「私が請求をさなかったから、あなたたちはこの労働の価値をゼロだとい込んでいただけです。もう、タダの介護はしません」
部のを、針が落ちるような静寂が支配した。
義母の目から、粒の涙がポロポロと畳のに落ちていく。
それはりでも儘でもなく、自分自が寄りかかってきたもののさに、初めて押し潰されたの涙だった。