"無償の介護係だった嫁" 第10話
【10】「母さんの通院のせいで、プロジェクトをされた」
親族ローテーションが始まって週目の曜。
夜零を回ったリビングに、玄関のドアが乱暴にく音が響いた。
入ってきた健司は、スーツの着を指に引っ掛け、ネクタイをだらしなく緩めていた。
その顔には、隠しようのない屈辱とりが張り付いていた。
「……された」
健司は革靴を脱ぎ散らかし、リビングのソファに倒れ込むように座った。
「プロジェクトリーダー、ろされたよ。来期の昇もだ」
私はダイニングテーブルでいていた講座のテキストから顔をげ、静かに夫を見つめた。
事の発端は、今週の曜だった。
健司の担当だったその、朝番で義母が急激な血圧昇と激しい痢を起こした。
かかりつけの内科へ連れてき、点滴を受けさせ、オムツを替え、薬局で薬を受け取るまでに以かかった。
その、健司の会社では、半準備してきたクライアントとの最終プレゼンが予定されていた。
健司は病院の待から「遅れる」「午にはく」と連絡を入れ続けたが、病院の会計が終わったのは午を回っていた。
プレゼンは別の輩が代理でち、型契約は無事に取れたものの、クライアントの役員からは「事なに連絡本で穴を空ける責任者は信用できない」
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と烙印を押されたという。
「母さんの通院のせいで……俺ののキャリアが全部パーだ」
健司は両で顔を覆い、呻くように言った。
「真奈美、おなら分かってただろ? 内科の午診療がどれだけ混むか、会計にどれだけ待たされるか! なんで言『曜の朝は混むから避けた方がいい』って教えてくれなかったんだよ!」
「言ったわよ」
私は帳をいて見せた。
「曜と曜は循環器の専医が来るから、待は待ちになるって、蔵庫のメモに赤ペンでいておいたわ。あなたが読まなかっただけでしょう」
「そんなの、いちいち見てられるかよ! こっちは仕事でがいっぱいなんだぞ!」
その、テーブルののスマートフォンが甲く震えた。
画面には『由』の文字。
スピーカーフォンにして通話を取ると、受話器の向こうから器が割れる鋭い音が響いた。
「……もう嫌。もう無理……!」
由の過呼吸のような泣き声だった。
「夫と喧嘩した……。『おが実の母親にかかりきりで、夕飯も作らないし部も片付かないなら、もう実に帰れ』って……。さっき、痛薬もうとしてが滑って、お気に入りのティーカップ全部割っちゃった……」
話から、由の荒い息遣いと嗚咽が漏れ聞こえてくる。
週に回、仕事を退して義母の部に通い、夜に起こされ続けた義妹の限界だった。
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「お兄ちゃん、そこにいるんでしょう……? 私、もうこれ以無理だよ……。仕事もクビになりそうだし、庭まで壊れちゃうよ……!」
リビングに、苦しい沈黙が落ちた。
ソファでを抱える夫と、話の向こうで泣き崩れる義妹。
が誇らしげに掲げた「族だけでる」という誓いは、たった週で音をてて砕け散っていた。
「……真奈美」
健司が顔をげ、血った目で私を見た。
その瞳には、かつて私を見していた傲さは微もなく、溺れる者が藁を掴むような卑しい懇願だけが浮かんでいた。
「頼む……。元の活に戻してくれ……。おがにいてくれさえすれば、誰も仕事を失わずに済むんだよ……」
私は帳を静かに閉じた。
そして、バッグのから枚の名刺を取りし、テーブルの真んに置いた。
『域包括支援センター 主任介護支援専員 岸』
「、ケアマネジャーさんにに来てもらう約束をしてあるわ」
私はに向けて告げた。
「これ以、あなたたちのを犠牲にして族ごっこを続けるのは、もう終わりにしましょう」