"無償の介護係だった嫁" 第9話
【09】「どうしてあなたが、私の介護を“伝う”の?」
健司の温かい指先が、私の首に触れた瞬。
私ので、何かが音をててえ切った。
私は自分のをゆっくりと引き戻した。
グラスに残った麦茶の氷が、カランと虚しい音をてる。
「……何だよ」
健司が満そうに眉をひそめた。
「俺は歩み寄ってんだぞ? 『伝う』って言ってんだから、文句ないだろ」
「伝う?」
私はその言葉を、舌ので転がすように繰り返した。
「ああ。俺だって仕事があるし、由だって庭がある。でもできる限りサポートするって言ってるんだ。これ以、何を望むんだよ」
「健司さん」
私は子の背もたれにをかけ、夫の充血した目をまっすぐに見据えた。
「どうしてあなたが、私の介護を“伝う”の?」
「……は?」
健司がの抜けた顔をした。
「お義母さんは、誰の親?」
「誰の親って……俺と由の親に決まってんだろ」
「そうよね。あなたと由さんの母親よ。血の繋がった、たったの実の親よ」
私の声は、夜の静まり返ったリビングに、鋭いナイフのように突き刺さっていった。
「もし、この介護の主役があなたたち兄妹で、私が息子の嫁として『できる範囲でお伝いします』って言うなら、その言葉は成するわ。でも今のあなたの言い方は何?」
健司が息を呑み、わずかにずさった。
「あなたが言っているのは、『介護は本来、嫁である真奈美の仕事だ。
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でも真奈美がへそを曲げて変そうだから、優しい夫である俺と妹が、しだけ伝ってやる』でしょう?」
「そ、そんなつもりで言ったんじゃ――」
「そういうつもりで言っているのよ」
私は歩、テーブルに歩み寄った。
「、あなたはずっとその目線で私を見ていたわ。私が義母の汚れたシーツを洗いしている横で、『真奈美は偉いなあ、俺にはできないよ』ってテレビを見ていた。それは賞賛じゃない。責任の放棄よ」
健司の顔が、羞恥とりでみるみるうちに赤く染まっていく。
「お……! 俺がでどれだけ稼いできて、このを維持してるとってんだ! 稼ぎがあるから飯がえてるんだろ!」
「なら、その稼ぎのから、正当な介護費用をして」
私は即座に切り返した。
「私のと、私の健康と、私ののは、あなたの料袋には含まれていないわ。私はあなたの母親の介護をするために、このに嫁いできたんじゃない」
「真奈美!!」
健司がちがり、テーブルを拳で叩いた。
缶ビールが倒れ、黄い液体がいテーブルクロスにじわりと広がっていく。
そのだった。
奥の義母の部から、ドスンという鈍い落音と、鳴が響いた。
「あ……あああっ! 健司! 痛い、起きがれない……! 健司ぃ!!」
健司の肩がビクッとねがった。
青ざめた顔で義母の部のドアを見つめる夫の横で、私のスマートフォンがく震えた。
画面を見ると、医療事務講座の事務局からの自通だった。
『受講始まで、あと24。事課題の提期限がづいています』
「おい、真奈美……母さんが……」
健司がすがるような目で私を見た。
私は麦茶のグラスをシンクに置き、夫には目もくれずに自分の寝のドアノブを回した。
「あなたの番よ、健司さん。の朝まで、しっかりお母さんを守ってあげて」