"無償の介護係だった嫁" 第5話
【05】「息子の俺に、母親の体を洗えって言うのか」
「触らないでよ、健司さん」
玄関のたいタイルので、私は自分を掴んでいた夫のをい切り払いのけた。
健司はよろめき、持っていた汚物入りのビニール袋をに落とした。
袋から漏れるツンとしたアンモニアの臭いが、狭い玄関にち込める。
「な、なんだよその目は……! 妻のくせに、夫にそんな態度取っていいとってんのか!」
「いいから、由さんのへくわよ」
私は淡々とスニーカーの紐を結び直した。
「え……? ってくれるのか?」
健司の顔に、あからさまな堵が浮かんだ。
「なんだよ、最初からそう言えよ! 脅かしやがって。やっぱりおがいないと母さんも――」
「勘違いしないで」
私はちがり、持参したバッグからゴム袋とエプロンを取りして見せた。
「私は今、あなたに介助の順を教えるだけ。は切さないわ。体を洗うのも、オムツを替えるのも、息子のあなたがやるのよ」
「……は? 息子の俺に、母親の体を洗えって言うのか!?」
「当たりでしょう。誰の親だとっているの?」
分、由のマンションのリビングは、獄のような惨状だった。
には散乱したティッシュと濡れタオル。
ソファの端で、由が膝を抱えて放状態で座り込んでいる。
そして奥のでは、背の痛みを訴える義母が、汚れた布団ので荒い息を吐いていた。
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「お義母さん、お呂入って背を綺麗にしましょう。健司さんが洗ってくれますから」
私が声をかけると、義母の顔が恐怖に歪んだ。
「い、嫌よ……! なんで健司が……! 真奈美さん、あなたやってちょうだい! 息子に裸見られるなんて、恥ずかしくてんじゃうわよ!」
「健司さん、を脱がせて。両脇を抱えて、お呂まで運んで」
私は義母の叫びを無し、脱所のドアのから指示をした。
「お、おい真奈美、伝えって! 母さんが暴れるんだよ!」
「伝わないわ。元に滑り止めマットを敷いて。シャワーの温度は度。それ以いと臓に負担がかかるから」
「おい! 真奈美!!」
脱所の引き戸がバタンと閉められた。
から、健司の焦った鳴り声と、義母の鳴のような拒絶が響き渡った。
「母さん、くな! 滑るだろ!」
「見ないで! あっち向いて健司! やだ、真奈美さんを呼んでぇ!!」
「俺だって見たくて見てるわけじゃねえよ! クソッ、泡が目に入った! シャワーどこだ!?」
ガシャン、と洗面器がひっくり返る甲い音が響いた。
、私がで、誰にも見られない浴で、腰の痛みに耐えながら毎繰り返してきた作業だった。
健司はそのたった度、最初の分で、完全に音をげていた。
扉のガラス越しに、からシャワーの湯を被ってずぶ濡れになった健司のが、けなく屈み込むのが見えた。