"大関の着物を切り裂いた機内の酔客5人" 第7話
「気の悪い野郎だ。殴っても殴っても、全く声もしやがらねえ」
5の男たちは、無抵抗の郎を殴り続けることに、次第に疲労と焦りをじ始めていた。
彼らの拳の方が、まるで分いゴムの壁を殴り続けているかのように、ジンジンと赤く腫れがってきていたからだ。
スキンヘッドの巨漢が、額の汗を拭いながらげに呟いた。
「おいブラッド、このクソデブどうなってんだ。まるでダメージが通ってねえみたいだぞ」
ブラッドは顔を真っ赤にして激昂した。
「うるせえ。ならもっといらせてやるまでだ」
ブラッドは、今度は郎の背で震えている老婦へと酷な線を向けた。
「おい、干からびたババア。おがしゃしゃりてくるから、このデブが余計に痛い目を見てるんだぜ。おも連れにしてやるよ」
ブラッドは、郎の防御の隙を縫うようにして、背の老婦に向かって太く汚い腕を伸ばした。
標が自分から老婦へと変わった瞬、それまで静かに耐え忍んでいた郎の瞳の奥で、カッと激しい炎が燃えがった。
『これ以は絶対に許さん』
郎の体から、それまでとは全く違う、周囲の空気をビリビリと震わせるほどの凄まじい覇気がち昇った。
その異様な気配に、ブラッドはわず息を呑み、伸ばしたをピタリと止めた。
広告
ブラッドの汚いが、郎の背にいる老婦の胸ぐらへと伸びていた。
まさにその瞬だった。
暗い内に、万力で鋼鉄を挟み込んだような、くい音が響いた。
「あぁっ」
ブラッドの顔から瞬にして血の気が引いた。
老婦に届く数センチで、彼の首は、郎の丸太のような太い腕によって完全に捕まれていたのだ。
力士の握力は常を遥かに凌駕する。
特に関である郎の握力は、リンゴを片で軽々と握りつぶすほどの恐ろしいパワーを秘めていた。
ブラッドは顔を真っ赤にして叫び、もう片方ので郎の腕を必に叩いた。
「い、痛え。せ。このクソデブ。骨が、骨が砕ける」
だが郎の腕は岩盤のようにビクともしない。
そして、今まで沈黙を貫き、殴られるがままになっていた郎がついにをいた。
「これ以、この女性たちに触れることは絶対に許さん」
その言葉は、く響き渡るバリトンボイスで紡がれた。
極めて流暢で洗練された、完璧な英語だった。
ブラッドは痛みに顔を歪めながらも、信じられないものを見るような目で郎を見げた。
「は……お、英語が喋れるのか」
取り巻きの4も目を丸くしてち尽くしている。
スキンヘッドの男が、信じられないというようにずさりした。
「おいおい、嘘だろう。
広告
こいつ俺たちが言ってた悪を全部理解してたってのか」
これこそが、郎の持つ秘密の1つであった。
郎は今回のラスベガスでの公演にあたり、本の国技を世界に正しく伝えるため、数から英語の勉をねていた。
常会話レベル以の英語を、完璧にマスターしていたのだ。
つまり郎は、ブラッドたちが自分に浴びせた醜い侮辱のセリフの数々を、最初から全て理解していた。
理解したで、彼らの未熟な挑発に乗らず、の余裕と力士としての矜持を持って、無という無言の抵抗を続けていたのである。
郎は静かに、だが圧倒な威圧を込めた英語で言い放った。
「おたちが私を殴るのは構わない。だが者を傷つけることは、本の関として見過ごすわけにはいかない。席へ戻りなさい」
郎はブラッドの首をパッと放した。
「あぁっ……」
解放されたブラッドはバランスを崩して無惨に尻餅をついた。
彼の首には、郎の太い指の跡が、くっきりと赤の痣になって残っていた。
その様子を見て、背にっていた老婦がフッと静かに微笑んだ。
「あなたたち、本当に愚かですね。この殿方のもう1つの秘密に、まだ気づいていないのですね」
ブラッドがにいつくばりながら鳴る。
「秘密だと?なんだと、このババア」
老婦は静かに説を始めた。
「あなたたちの拳は、さっきから赤く腫れがっているじゃありませんか。