"大関の着物を切り裂いた機内の酔客5人" 第6話
いかに靭な肉体を持つ力士と言えども、素で無抵抗のまま格闘技経験者の5の男からの斉攻撃を受ければ、ただでは済まない。
最悪の、命に関わる傷を負う能性もある。
その瞬、ブラッドがにしていたウイスキーボトルのい底が、郎の顔面に向かって直線に振りろされた。
ブラッドがウイスキーボトルの分い底を、郎の顔面めがけて全力で振りろしたのだ。
郎の研ぎ澄まされた反射神経ならば、素の振りの撃など容易に躱すことができた。
だがもし自分がここで避けたら、そのろで震えている老婦と佐藤に直撃してしまう。
郎は歩も退かず、あえてその分い胸をわずかにに突きし、自らの肉体を巨な盾にした。
鈍く、骨にまで響くようない音が内に響き渡った。
分い筋肉の鎧に覆われているとはいえ、いガラス瓶による全力の殴打である。
郎の顔をかすめ、肩に命すると鋭い痛みがり、質な絹の着物が衝撃で無惨に裂けた。
郎はく息をんだが、その表は岩のように微だにせず、決して倒れることはなかった。
ブラッドはを止め、信じられないというように目を見いた。
「な、なんだこいつ。岩でも殴ったみたいだぞ」
のでボトルの底が々に砕け散っていた。
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彼の首には、ジンジンとい痺れがっている。
だが、郎が反撃してこないことを確信すると、ブラッドの恐怖はすぐに嘲笑へと変わった。
「はは。おい見ろよ。こいつ本当に反撃してこねえぞ」
ブラッドはひしゃげた笑いを浮かべ、仲たちを振り返った。
「ただ図体がでかいだけの、本当にただの豚だ」
ブラッドの嘲笑に呼応するように、取り巻きの4も斉に劣な笑い声をあげた。
「よし、俺たちでこの豚に本のアメリカンファイトを教えてやろうぜ。のサンドバッグ代わりにちょうどいいや」
5のならず者たちは完全に理性を失い、背の女性たちをかばって屈み込むように防御姿勢を取る郎に向かって、無数の拳と蹴りを浴びせ始めた。
バキッ、ドカッ。
いかに鍛え抜かれた力士の肉体とはいえ、無抵抗のまま屈な男5から斉に殴る蹴るの暴を受ければ、無事で済むはずがない。
顔面、脇腹、背。霰のようにり注ぐ暴力。
ついに郎の角から、筋の赤い血がツーっと流れ落ちた。
佐藤が鳴をあげ、涙をポロポロとこぼしながら叫んだ。
「やめて、もうやめてください。誰か、誰か助けて」
背に守られている老婦も、震えるで黒檀の杖をく握りしめ、痛な表で郎の広い背を見つめている。
周囲の本客たちのにも、りで拳を震わせ、今にもびそうとする者はいた。
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しかし、柄なアメリカが狂ったように暴力を振るう狂気の空に割って入る勇気を持てる者は、誰もいなかった。
を呼ぼうと叫んでも、ここは度1万mの空の。
の乗務員が駆けつけるにしても、通は彼らの巨体によって完全に塞がれている。
ブラッドが郎の腹部に烈な膝蹴りをらわせながら、容赦ない侮辱の言葉を浴びせる。
「おい、どうした豚野郎。痛いなら泣き喚いてみろよ。ごめんなさい、許してくださいって英語で言ってみろ」
彼はさらに嘲笑した。
「おら本は結局こうやって、俺たちアメリカに踏みつけられる運命なんだよ。本の相撲なんて、ただの太った奴らの気持ち悪いダンスじゃねえか」
どんなに罵られようと、殴られようと、郎は決してをかなかった。
彼が声をげないのは、痛みをじていないからではない。
ここで自分が声を荒げ、りに任せて反撃してしまえば、力士としての誇りを失い、師匠との約束を破ることになるからだ。
そして何より、彼がしでもけば背の女性たちに危険が及んでしまう。
だからこそ、郎は耐え続けた。
本の国技を背負う者として、関としてのと、底れぬ忍耐力。
それが彼の精神を支えていた。
腕に蛇のタトゥーを入れた男が、息を切らしながら忌々しそうに舌打ちをした。