"毎日届く「パパを来させないで」" 第12話
「ここなら、もう片方の話を聞かれない」
「違うよ」
美咲の声は、驚くほど澄んでいた。
「え……?」
「パパが嫌いだから、ここに来たんじゃない」
美咲は首を横に振った。
非難するようなも、りのもない。
ただ、徹な事実を淡々と告げるような声だった。
「ママにってるからでもないよ」
「じゃあ……なんで、をておばあちゃんのところに来たの?
あんなに急に、でタクシーまで呼んで……」
美咲はしだけ線を宙に彷徨わせ、それから、まっすぐに私の瞳の奥を射抜いた。
「ここなら、もう片方の話を聞かれないから」
その言葉のを理解するのに、私の脳は数秒の空をした。
「……もう片方の、話?」
「うん」
美咲は、畳の縁の布をさな指先でなぞりながら、静かに語り始めた。
「パパと緒にいるとね、パパは美咲に、ママの話しかしないの。
ママが何に帰ってきたか。ママが誰とラインしてたか。ママが実のおばあちゃんとパパの悪を言ってないか……」
美咲の声には、何の抑揚もなかった。
「ママと緒にいるとね、ママは美咲に、パパの話しかしないの。
パパがので何を聞いてきたか。パパが夜に部に来なかったか。パパが引っ越しのことに気づいてないか……」
喉がカラカラに渇いた。
呼吸が浅くなり、胃の底がえ切っていく。
「パパと配になると、ママの詮索が始まる。
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ママとになると、パパの詮索が始まる。
とも、美咲の顔を見て話してるのに……見てるのは、美咲のろにいるもうのことばかりだった」
「美咲、ママはそんなつもりじゃ……」
「おばあちゃんはね」
美咲は私の言葉を遮り、しだけ表をらげて言った。
「おばあちゃんは、美咲にパパのことも、ママのことも聞かないの。
『美咲、学は楽しかったかい』って聞いてくれる。
『美咲、朝ごはんは卵焼きがいいかい』って聞いてくれる。
……美咲自のことだけを、聞いてくれるの」
胸の真んを、巨な杭で打ち抜かれたような衝撃だった。
の芯が痺れて、界が歪んだ。
私たちは、美咲を見ていなかった。
浩司が美咲をに乗せていたのは、妻の穏なきを監するためだった。
私が美咲をカフェに連れてったのは、夫が裏で何を企んでいるかを探るためだった。
『美咲の方だから』
『美咲を守るためだから』
そうやって美しい言葉でコーティングしながら、私たちが娘に向けていた線の先には、常に「憎い配偶者」のしか映っていなかったのだ。
歳の娘は、がにいる限り、常に「のもう」を召喚するための依代にされていた。
のに、美咲自の居所なんて、最初からミリもしていなかったのだ。
「おばあちゃんのに着いたね、すごくホッとしたの」
美咲はさく息を吐いた。
「もう、パパの悪を聞かなくていいんだ。
もう、ママの怯えた顔を見なくていいんだ。
……どっちのことも、隠さなくていいんだって」
美咲の瞳から、筋の涙が静かに頬を伝った。
けれど娘はそれを拭おうともせず、ただ膝ののをじっと見つめていた。
「美咲ね、ずっと嘘をついてたよ」
娘の告は、まだ終わっていなかった。
そしてその続きは、私の像を絶するほど残酷な、歳の女の常だった。