"毎日届く「パパを来させないで」" 第9話
「なんで当然なの? 私は具じゃない」
美咲のその言に、リビングの空気が完全に凍りついた。
「え……?」
私の声が、けなく喉の奥で裏返った。
美咲はゆっくりとリビングのにを踏み入れた。
背負ったリュックのみで、さな肩がわずかに沈んでいる。
「なんで、『当然、ママと暮らす』の?」
娘の瞳には、りも、しみも、何も映っていなかった。
ただ、果てしない絶望だけが横たわっていた。
「美咲……それは、ママは美咲のことを番に考えて……」
「考えてないじゃん」
美咲の声は、叫び声よりもたく、く響いた。
「パパは、美咲を連れてかれたら『負け』だから、美咲を渡したくないんでしょ」
浩司がビクッと肩を揺らし、息を呑んだ。
「ママは、美咲を連れてかないと『かわいそうな母親』になれないから、美咲を連れてきたいんでしょ」
「美咲、そんなこと……!」
私の弁を、美咲はややかな線で遮った。
「どっちも、美咲のことなんか見てないじゃん。とも、自分が悪くないって言いたいだけじゃん」
言葉がなかった。
反論しようといたから、空気が抜けていく。
浩司が、取り繕うように歩み寄ろうとした。
「み、美咲、違うんだ。パパはおのことが配で……おが自由しないように……」
「寄らないで!」
美咲が鋭く叫んだ。
その拒絶のさに、浩司のがピタリと止まる。
「美咲は、パパの持ち物じゃない。
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ママの方でもない。……のおもちゃじゃないんだよ!」
歳の娘のさな体から絞りされたその叫びは、私たちの欺瞞を、虚飾を、完璧に砕した。
私たちは、子どもを守っているつもりだった。
子どものために苦渋の決断をしているつもりだった。
けれど、美咲から見れば、私たちは互いに相を攻撃するための棍棒として、子どもを奪いっていただけに過ぎなかったのだ。
美咲は背のリュックのベルトをギュッと握り直した。
「美咲、どこへく気だ」
浩司が狼狽した声で問う。
「おばあちゃんのにく」
「え……?」
私は目を見張った。私の実――で分ほどの距にある、私の母のだ。
「来週の面談が終わるまで、おばあちゃんのにいる。と緒にいたら、息ができない」
「待ちなさい、美咲!」
浩司が声を荒げ、私を睨みつけた。
「おい、真由美! おが仕向けたのか!? おの母親のに子どもを逃がして、既成事実を作る気か!」
「違うわ! 私だって何も聞いてない!」
「嘘をつくな! グルになって俺から美咲を奪う気だろうが!」
また始まった。
目ので子どもがをてこうとしているその瞬ですら、私たちは互いを疑い、責任を擦り付けわずにはいられないのだ。
美咲は、そんな私たちを瞥し、ふっと元に乾いた笑みを浮かべた。
「ほらね。やっぱり、美咲のせいにするんだ」
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美咲は踵を返し、玄関へと向かった。
「美咲、待ちなさい! 夜は危ないわ!」
私が追いかけようとすると、美咲は玄関のにりち、素くスニーカーにをつっ込んだ。
「タクシー呼んだから。もう角のところに来てる」
「美咲っ!」
ガチャリ、とい玄関の鍵がけられた。
のたい夜が、のに吹き込んでくる。
美咲は度だけ振り返った。
その顔は、このに越してきてからの数で、番く、のように見えた。
「とも、っ嫌い」
バタン。
容赦のない音をてて、ドアが閉まった。
ガチャリ、と側から属の擦れる音がして、音がざかっていく。
追いかけようとして玄関にびした私のは、敷居のところで止まった。
の暗の、タクシーの赤いテールランプが、宅の角を曲がって消えていくのが見えた。
玄関には、たい夜の静寂だけが残されていた。
振り返ると、廊の向こうで、浩司がち尽くしていた。
りに任せて拳を握りしめたまま、けれどその顔は蒼に引きつり、激しく揺していた。
のには、もはや誰もいなかった。
嘘を継してくれる娘も、顔を窺ってくれる子どもも、ここにはもういない。
ただ、修復能なまでに壊れ果てた、のだけが、暗ので取り残されていた。