"毎日届く「パパを来させないで」" 第8話
「母親の私が育てるに決まってるでしょ」
に戻ると、美咲の部のドアには鍵がかけられていた。
何度ノックしても、呼びかけても、返事はない。
ただ、部のから微かにベッドが軋む音だけが聞こえていた。
もう、取り繕うことはできない。
美咲という緩衝材を失った今、このには私と浩司という、剥きしの敵を抱えたのしか残されていなかった。
夜の半。
玄関のドアがき、浩司が帰宅した。
靴を脱ぐ音、ため息の音。
浩司がリビングのドアをけた瞬、私はダイニングテーブルの席からちがった。
「浩司さん。話があるわ」
浩司はコートを脱ぎかけたままで、怪訝そうに私を瞥した。
「疲れてるんだよ。飯なら適当に……」
「美咲の面談のに、私たちのことを決めましょう」
私のい語気に、浩司のが止まった。
リビングの空気が、張り詰めた弦のようにピンと張り詰める。
「……何の話だ」
「別居しましょう」
私は逃げずに、夫の目をまっすぐに見つめた。
「もう限界よ。あなたが美咲をので尋問していたことも、私があなたに内緒で部を探していたことも、全部美咲はってる。あの子、今、カフェで私に言ったわ。『自分たちで直接話せ』って」
浩司の顔が、りと屈辱で赤黒く染まっていく。
「私たちが、美咲を追い詰めたのよ。これ以、あの部でで暮らし続けるのは、美咲に対する虐待と同じだわ。
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だから、面談のに部を決めて、私と美咲はてきます」
「……は?」
浩司のから、乾いた失笑が漏れた。
コートをソファに投げ捨て、浩司は股で私に詰め寄ってきた。
「てく? おと美咲が?」
「ええ。婚届のことは、別居してから弁護士を通して話しいましょう」
「ふざけるなよ!」
浩司の号が、リビングの壁を震わせた。
その瞳には、血った狂気が宿っていた。
「誰がてっていいって言った! 別居だの婚だの、おがで勝に決めてんじゃねえよ!」
「勝に決めたんじゃないわ。あなたが美咲を壊しかけたからよ!」
「壊しかけたのはおだろうが!」
浩司はテーブルをバン、と激しく叩き、を乗りした。
「いいか、百歩譲って婚するとしてだ。なんで美咲がおについていく提なんだよ!」
「……何言ってるの?」
「美咲は俺の娘だ! 俺が置いていくわけないだろうが!」
浩司のからびした言葉に、私はを疑った。
「俺が育ててきたんだ! まれてから今まで、保育園の送り迎えも、休の公園も、塾の送迎も、全部俺がやってきた! おはパートにて遣い稼ぎしてただけだろ! 俺の方が収入もだ。持ちもある。美咲を転させずに済むのは俺の元にいる方だ!」
あまりの勝さに、目眩がした。
この男は、娘の気持ちなどこれっぽっちも考えていない。
ただ、「妻に捨てられた惨めな男」
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になりたくないだけなのだ。
美咲を元に残すことで、自分のプライドと、庭の支配権を守り抜こうとしているだけなのだ。
「冗談じゃないわ!」
私の奥底で、母親としての本能が激しく爆発した。
「あんな怯えさせ方をしておいて、父親面しないで! 精神に子どもを追い詰めるようなに、美咲を任せられるわけないでしょう!」
「おだって同じだろうが! 面でコソコソきやがって!」
「母親の私が育てるに決まってるでしょ!」
叫んでいた。
リビングに響き渡る声で、私は叫んでいた。
「母親の私が、美咲を引き取るの! 当然じゃない! 母親なんだから!」
その瞬だった。
リビングの引き戸が、スーッと数センチだけいた。
隙から、たい廊のが流れ込んでくる。
私と浩司は、ハッと息を呑んでドアのほうを振り返った。
そこに、美咲がっていた。
靴を履き、着替えのを詰め込んだそうな通学用リュックを、両肩に背負っていた。
には、サブバッグまで握りしめられている。
いつから、そこにいたのか。
私たちの醜い鳴りいを、どこから聞いていたのか。
美咲の顔には、涙の跡ひとつなかった。
ただ、磁の仮面のように無質な表で、私たちを見つめていた。
そして、私の目をまっすぐに見据えて、静かにをいた。
「……なんで、当然なの?」