"毎日届く「パパを来させないで」" 第7話
「パパとママのことは、自分で聞いて」
駅ビルの階にあるカフェは、平の夕方ということもあって静かだった。
美咲のに運ばれてきたのは、たっぷりのホイップクリームと削りチョコが乗ったパンケーキだ。
普段なら、目を輝かせてスマホで写真を撮りたがるはずのメニューだった。
けれど、美咲はフォークをに持ったまま、じっとかない。
「美咲、べないの? クリーム、溶けちゃうよ」
「……うん」
美咲はさくフォークをかし、パンケーキの端をほんのし削り取ってに運んだ。
美しいとも、甘いとも言わない。
ただ、義務のように咀嚼している。
私は温かい茶のカップに両を添え、言葉を選びながらをいた。
「美咲……昨は、パパが鳴ったりして、怖かったよね。ごめんね」
美咲は伏し目がちに、フォークの先を見つめている。
「ママね、ずっと考えてたの。パパとママのことで、美咲にたくさんさせて、辛いいをさせてたんだって。本当に反省してる」
美咲の睫毛が、微かに揺れた。
「者面谈のプリント、見たよ。美咲のこれからのこと、ちゃんと美咲の方になって考えたいの。パパはあんなに言ってるけど……ママは、美咲が番できる方法を選びたいとってる」
私の言葉に、美咲は何も答えない。
沈黙が流れる。
その沈黙に耐えかねて、私の胸の奥に潜んでいた焦りが、喉元までせりがってきた。
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浩司がで何を考えているのか。
昨夜、私が寝た、美咲の部にって何か吹き込んだのではないか。
そのが、無識のうちに私のを滑らせた。
「……ねえ、美咲。パパ、昨の夜、美咲の部に来たりしなかった?」
美咲のが、ピタリと止まった。
「パパ、何か言ってなかった? ママの悪とか……面談のこととか。美咲に何か言わせようとしてなかった?」
言ってしまった。
気づいたには、もう遅かった。
美咲が、ゆっくりとフォークを皿のに置いた。
カチャリ、とい陶器の音が、静かなカフェの内にやけにきく響いた。
娘は顔をげた。
その瞳を見た瞬、私は息を呑んだ。
そこにあったのは、歳の子どもの瞳ではなかった。
の切を削ぎ落とした、絶対零度のたさがそこにあった。
「……ほらね」
美咲のから、乾いた掠れ声が漏れた。
「え……?」
「ママも、結局それじゃん」
美咲はまっすぐに私を見据えていた。
その線が、刃物のように私の胸に突き刺さる。
「パンケーキべようって言ったのも、美咲の方だって言ったのも……パパが何言ってたか聞きすためだったんでしょ」
「ち、違うの、美咲! ママはただ、美咲が配で……」
「嘘ばっかり」
美咲はを荒らげることもなく、淡々と言い放った。
その静けさが、鳴られるよりも遥かに恐ろしかった。
「美咲はね、もう誰も信じない」
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美咲は子からちがった。
ランドセルを背負い、テーブルのに置かれた伝票を瞥する。
「パパとママのことは、自分で聞いてよ」
「美咲……!」
私がちがろうとした瞬、美咲は歩ろへがり、私のを拒絶するように両腕を胸ので組んだ。
「なんで美咲に聞くの? パパも、ママも、でしょ? 喧嘩するなら、で直接やればいいじゃん。なんでいつも、美咲に言わせるの?」
カフェの周囲の客が、ちらりとこちらを振り返るのが分かった。
けれど、美咲はそんなことすらに介さない様子で、たく言い捨てた。
「美咲のこと、ダシにしないでよ」
娘はそのまま、度も振り返ることなく、カフェのへとりで向かっていった。
「美咲っ!」
私は伝票を掴み、レジに幣を叩きつけるように置いてをびした。
けれど、駅の混みのに、さなランドセルのろ姿はもうどこにも見当たらなかった。
のを、美咲の言葉が何度も、何度もリフレインしていた。
『ママも、結局それじゃん』
『美咲のこと、ダシにしないでよ』
のひらに、たい脂汗が滲んでいた。
私は、浩司とは違うとっていた。
子どものを傷つける夫を軽蔑し、自分だけは娘に寄り添う理解者であると信じ込んでいた。
でも、違った。
私もまた、自分のを解消するために、美咲をスパイに仕てげようとしていたのだ。
ケーキという甘い餌をぶらげて、娘のから夫の報を引きそうとしていたのだ。
自分の醜悪さに、胃の奥が激しく痙攣した。
吐き気をこらえながら、私はい取りで、あの息の詰まるがへと引き返すしかなかった。