"毎日届く「パパを来させないで」" 第5話
「ママだって部のこと隠せって言った」
私の問いかけに、美咲はピクリと肩を揺らした。
「パパが……言っちゃダメって言ったから?」
私が優しく促すようにねると、美咲はゆっくりと首を横に振った。
「パパも言ったよ。『ママには内緒だぞ、るからな』って」
「ほら、やっぱりパパが止めを……」
「でもね」
美咲が顔をげた。
その瞳には、涙ではなく、ひどくめた、のようなが宿っていた。
歳の子どもが見せるはずのない、底れない疲労のだった。
「ママだって、言ったじゃん」
私の考が、瞬止した。
「……え?」
「先、ママのスマホでい部の写真見てたとき。美咲が『これどこ?』って聞いたら、ママなんて言った?」
臓が、ドクンと嫌な音をてた。
「『これはパパには内緒ね。まだ決まってないから、絶対に言っちゃダメだよ』って……ママ、美咲に言ったじゃん」
を鈍器で殴られたような衝撃がった。
先。
リビングで、浩司が呂に入っている隙に、私はスマホでアパートの取り図を見ていた。
コンロで、学の学区かられない、当たりのいい2LDK。
覗き込んできた美咲に、私は微笑みながら、けれど真剣な顔で言い含めたのだ。
『パパには内緒だよ。余計な配をかけたくないからね』
「美咲……それは……」
言い訳の言葉が、喉元で引きちぎられた。
「ママは、美咲がにならないようにとって……」
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「パパも同じこと言ってたよ」
美咲の淡々とした声が、私の胸を容赦なく抉った。
「『パパは族のために頑張ってるんだから、ママをらせないように、の秘密にしておこうな』って」
息ができなかった。
「パパには、ママが誰と話したか聞かれて、言わなきゃられるとって……適当に『おばあちゃんじゃない?』って嘘ついた。
ママには、パパが何に帰ってくるか聞かれて……く帰ってくるって言うとママが嫌な顔するから、『遅いみたい』って嘘ついた」
美咲は、膝ので自分の指を本ずつ折り曲げながら、械のように言葉を紡いだ。
「パパのに乗ると、ママの悪が始まる。
ママと緒にいると、パパの溜め息が始まる。
とも、美咲には『本当のことを言って』って言うくせに……本当のことを言うと、どっちかがるか、泣きそうな顔をするんだよ」
声がなかった。
私は、被害者だとっていた。
モラハラで支配欲のい夫から、娘を守るための防波堤になっているのだと、疑いもしていなかった。
『子どもをにさせないため』というもっともらしい免罪符を掲げて、婚の準備をめていた。
けれど、実際はどうだったのか。
私もまた、美咲に「父親に対する秘密」を背負わせていたのだ。
夫と同じように、歳の子どものにチャックをかけ、の都の良い共犯者に仕てげていたのだ。
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「美咲……私……」
伸ばしかけた私のは、空で固まった。
美咲が、私のをわずかに避けるように、体を引いたからだ。
ガチャリ、と部のドアがわずかにいた。
いつのにか階段をがってきた浩司が、ドアの隙からこちらを見ろしていた。
美咲の言葉が聞こえていたのだろう。
夫の顔には、りとも、屈辱ともつかない、歪んだ表が張り付いていた。
「……お、本当に部を探してたのか」
浩司の絞りすような声が、廊に落ちる。
リビングで夫婦喧嘩をしているよりも、遥かにく、たい沈黙がを取り囲んだ。
夫婦の嘘が、どちらも暴かれた。
そしてその嘘のすべてを、番全でなければならなかったはずの歳の娘が、両で抱え込まされていたのだ。
美咲は、ち尽くす父親と、にへたり込む母親の顔を、交互に見つめた。
るでもなく、泣き叫ぶでもなく、ただ諦めきった目で。
そして、机のに置かれていたランドセルを両で抱え込むと、私たちに背を向けた。
「……もう、どっちの話も聞きたくない」
パタン、と美咲は自らので、部のドアを静かに閉めた。
廊に取り残された私と浩司のには、ひとつ通らない、救いようのない暗だけが広がっていた。