"金曜日の証言まであと三日" 第18話
契約社員の通
事故から半が過ぎた。
の鹿児島は、くも初の陽気を帯び、のクスノキが鮮やかな緑を茂らせていた。
裁判は、に結審していた。
浦理恵には、懲役ヶ、執猶予の罪判決がされた。運転免許は取り消され、向こう数は再取得できない。被害者の側とは、正さんが親戚からをげてかき集めたと、自宅マンションを任売却した代をつぎ込み、示談が成した。
正さんは勤めていた品メーカーを自主退職した。
懲戒解雇こそ免れたものの、社内でのを失い、今は内の運送会社で配管理の契約社員として働いていると、の噂で聞いた。は郊の古い賃貸アパートに引っ越し、切り詰めた活を送っているらしい。
悠真については、現からのちりを積極に教唆したとまでは認められず、起訴猶予となった。
だが、アパートは退させられ、以の倉庫の仕事も失った。
この半、私は理恵とも、正さんとも、そして悠真とも、度も言葉を交わしていなかった。
スマートフォンの話帳から番号を消すことはしなかったが、トークアプリの履歴はスクロールしなければ見えないほどに沈んでいた。
私は普段通りの活を送っていた。
産会社の仕事に追われ、週末には掃除をし、スーパーで分の材を買い、折、母の墓参りにった。
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悠真のことをいさないはなかった。
けれど、探しにこうとはわなかった。あの子のはあの子のものだ。私がを差し伸べれば、また同じ依と甘えの沼に戻るだけだという確信は、揺らいでいなかった。
ある曜の黄昏、仕事を終えて駅のスーパーで買い物をしていただった。
ポケットのでスマートフォンが微かに震えた。
レジ袋を腕に提げ、駅広のベンチに腰をろして画面を見る。
表示されていたのは、半、度もくことのなかった名だった。
『浦理恵』
臓が、トクン、と静かに鳴った。
画面をタップしてく。メッセージは、たっただった。
『悠真くん、港の物流会社で期の契約社員として採用されたそうです。フォークリフトの免許も取るみたい』
それだけだった。
「元気ですか」も、「許してください」も、「会いたい」もかれていなかった。
ただ、事実だけが、事務連絡のようにく記されていた。
私はスマートフォンの画面を見つめたまま、しばらくけなかった。
港の物流会社。
あの子が、雇いではなく、契約社員として採用された。
かつてあれほど定職に就くことを嫌がり、責任から逃げ回っていた弟が、にまみれながら、自分のでとうとしている。
どこにある会社なのか、料はいくらなのか、社会保険はあるのか。
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聞きたいことはほどあった。指先がキーボードのを彷徨った。
けれど、私はそのどれも打ち込まなかった。
それをる権利は、もう私にはない。そして、る必もないのだ。
私は画面に指を滑らせ、文字だけを打ち込んだ。
『わかった』
送信ボタンを押す。
すぐに既読がついた。画面の向こうで、理恵が息を詰めて待っていたのが分かった。
私はしだけ迷い、それからもうだけ付け加えた。
『理恵は?』
送信。
数分の沈黙があった。夕暮れのが、スーパーのレジ袋をカサカサと鳴らした。
やがて、い返信が届いた。
『なんとかやってる。スーパーのレジ打ち、腰にくるわ』
その文章を見た瞬、私の元から、ふっと微かな笑みが漏れた。
、ずっと隣にいた女の、くだらない愚痴。
けれど、そこにはもう、のを勝に背負い込んだ壮も、傲な善もなかった。ただ、自分の活のみに文句を言いながら、今をきているのの体温があった。
『そう。無理しないで』
私はそう返信し、スマートフォンの画面を伏せた。
これ以は、踏み込まない。
私たちはもう、何でも分けえる無邪気な親友同士ではない。お互いの境界線を踏み荒らし、傷つけった果てに、ようやく「別々の」になれたのだ。
夕が、ビルのに沈んでいく。
私はレジ袋を持ち直し、夕暮れのを歩き始めた。