"金曜日の証言まであと三日" 第17話
警察署ので
警察署のエントランスをた、空は濃いと茜が混ざりう、苦しい夕暮れに染まっていた。
たいが、いで照った頬を叩く。
階段をりようとした私の背で、自ドアがく音がした。
振り返ると、そこに理恵がっていた。
弁護士とわれる黒いスーツの男性がしれた所で話をかけており、理恵は、すりにすがまるようにしてち止まっていた。
丸泣き腫らしたのだろう、その顔は痛々しいほど浮腫み、唇の皮が剥けて赤くなっていた。パジャマのに羽織ったコートのボタンは掛け違えられ、髪は乱れ、っていることすらやっとのように見える。
目がった。
理恵は怯えたように肩を竦ませ、線を泳がせた。けれど、逃げることはしなかった。
ゆっくりと、段ずつ階段をりて、私の数歩でち止まった。
「……織」
掠れた、震える声だった。
「正のこと……証言したのね」
「ええ」
私は逃げずに、親友の目をまっすぐに見つめ返した。
「分から分まで、私の部にいたって言ったわ。正さんの嘘は、全部崩れた」
理恵の唇がわなないた。りでも、みでもない。ただ、巨な現実のに打ちのめされたの、無防備な絶望がその瞳に浮かんでいた。
「……怖かった」
理恵は両で顔を覆った。
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指のから、乾いた涙が零れ落ちる。
「を撥ねたも……悠真くんが泣き叫んだも……正が『俺が代わる』って言って警察にったも……ずっと、臓が破裂しそうなくらい怖かった。自分が刑務所にくことも、正のを壊すことも、あんたに軽蔑されることも……全部が怖くて、息ができなかった」
「理恵」
「でもね、織」
理恵は顔をげた。涙で赤くなった目で、私を見つめた。
「警察で、あんたが正のアリバイを全部話したって聞かされた……私、けないけど、ほんのしだけホッとしちゃったの」
が、理恵の乱れた髪を揺らした。
「正に罪を被せたままきていくなんて、絶対に無理だった。毎晩、正の顔を見るたびに、自分の汚さに吐き気を催しながらきていくしかなかったのよ。……あんたが止めてくれなかったら、私、本当に化け物になるところだった」
私は何も言えなかった。喉の奥がく焼けるようだった。
「ねえ、織」
理恵が歩、私にづいた。その声は、震える子供のようだった。
「あんたは……もう、私とは絶交?」
痛切な問いだった。
の。お互いの失恋を笑いばし、親のを取り、何でも分けってきた歴史が、その言のにぶらがっていた。
「度と、私の顔なんて見たくないよね。あんたを裏切って、あんたの弟を隠れて囲い込んで、夫に代わりをさせようとしたような女……軽蔑するよね」
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私は夕暮れの空を見げた。
くで、カラスの鳴き声が響いていた。
「理恵」
私は線を戻し、静かに問いかけた。
「あんたは、これからも悠真に会うの?」
理恵の瞳が、さく揺れた。
彼女は線を元に落とし、コンクリートの隙にえた雑を見つめた。い、い沈黙が流れた。弁護士の話を切る声がくに聞こえる。
「……わからない」
理恵は絞りすように言った。
「今回のことで、悠真くんも警察に呼ばれて、また仕事を失うかもしれない。アパートも追いされるかもしれない。……もしあの子が、本当に飢えて、誰にも頼れなくて、私の目のに現れたら……」
理恵は顔をげ、濡れた瞳で私を見つめ返した。
「私が助けたいとったら、パンを渡すかもしれない。部を探すのを伝うかもしれない。……それは、あんたのためじゃない。私が、そうしたいから」
その答えを聞いた、私ので何かが、静かに、けれど決定にれた。
かつての私なら、激しただろう。「私の友達なら、私の決断に従いなさい」「あいつと縁を切らないなら、あなたとも縁を切る」と、正論を振りかざして相を縛りつけようとしたはずだ。
けれど、今の私には、その言葉はてこなかった。
悠真を切り捨てたのは、私の選択だ。
そして、悠真を見捨てないのは、理恵の選択なのだ。
私は私の痛みを背負い、理恵は理恵の業を背負う。
の選んだ荷物を、奪い取ることも、無理やりろさせることも、誰にもできない。
「そう」
私はく答えた。
「それは、あんたと悠真の問題よ」
理恵が目を見いた。
「私がをすことじゃない。あんたが悠真を助けたいなら、助ければいい。おを貸すなり、保証になるなり、自分の責任でやりなさい。……でもね、理恵」
私は歩、に踏みした。
「度と、私のためにやってるなんて言わないで。私のを勝に買い取ったり、私がるべきことを勝に決めたりしないで」
理恵の目から、再び涙が溢れした。今度は声をさずに、ただ静かに頷いていた。
「それから……しばらくは、連絡してこないで」
私のたい言葉に、理恵はさく肩を震わせた。
「私も、あんたに連絡しない。……友達に戻れるかどうかは、お互いが自分の活をちゃんと片付けてからよ」
それだけを告げると、私は背を向けた。
「織!」
背から、理恵の泣き叫ぶような声が追いかけてきた。
けれど私は、度も振り返らなかった。
暗くなった駐へ向かって、自分ので、しっかりと面を踏みしめながら歩き続けた。