"四年間、他人の父親" 第15話
空席のパイプ子
「浅野くん」
教がい声で告げた。
「保護者の正式な代理席がない以、規定により面談は実施できません。推薦類の提も見送りと――」
「実施してください」
私が遮った。
教が眉をひそめて私を見る。「田さん、部者がを挟まないでいただきたい。これは京都の公推薦の厳格な規約なのです」
「ええ、規約はっています」
私は歩も退かなかった。バッグから自分の運転免許証を取りし、教の胸元に掲げて見せた。
「私は保護者ではありません。ですから面談には歩も入りません。ですが、ここに『田浩の正当な配偶者』として、にわたる夫の無断名義使用に関するすべての事説と異議申してをする権利があります。それを拒否して推薦を方に取り消すというなら、区の教育委員会だけでなく、都の監査にも今から直接向かいます」
教の額に、嫌な汗が滲んだ。
公の管理職が最も嫌うのは、制度の備を突かれて部関に騒ぎを広げられることだ。
私は陸のにった。線のさをわせるように、わずかに腰を落とす。
「浅野陸くん。私はに入らない。川さんも入れない。でも、私は帰らないわ。そこの廊のガラス窓ので、あなたが終わるまでずっとって見てる」
陸は息を呑み、見かれた瞳で私を見つめた。
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「自分で入りなさい。に入って、先たちに言いなさい。父親はいないって。、の勝な都で嘘の名を類にかせていたって。全部自分ので話して、それでも自分がなぜそのへきたいのかを、で説してきなさい」
「……で?」
陸の声が、頼りなくかすれた。
歳のにとって、の教員が並ぶ密にで入ることは、丸腰で戦へ放りされるのと変わらない恐怖だったはずだ。
「そうよ、で」
私はの細い肩に、両を置いた。力を込めて、しっかりと掴む。
「の名を盾にするのは、今で終わりにしなさい。あなたのでちなさい、陸くん」
陸の喉が、引きつるようにさく鳴った。
恐怖に揺れていたの瞳の奥で、何かがカチリと音をてて噛みうのが分かった。それは絶望の果てにまれる、鋭利でい覚悟のだった。
陸は私のを乱暴に払いのけた。だが、先ほどまでの拒絶の力ではなかった。
は背負っていたリュックサックをにろすと、制の乱れた襟元を両で力任せに正した。そして川のから、自分が学のでき溜めてきた自作の希望ノートと、各種の資格証の分いファイルを奪い取った。
「……けてください」
陸は教を真っ直ぐに見据えて言った。
教は唖然としながらも、の放つただならぬ気迫に押され、ゆっくりと引き戸を引いた。
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面談の央には、脚の折りたたみパイプ子が並べられていた。
が徒用、が保護者用。
陸は迷いのない取りで部へ踏み込み、側のパイプ子に腰をろした。
側の子は、ぽっかりと空いたままだった。
誰の体温も残っていない、たいのスチールパイプ。そこに座るべき『父親』は、もうこの世界のどこにもいなかった。
ガラリと引き戸が閉められた。
私は川とともに、廊の細いガラス窓のにった。
ガラスの向こうで、教と川、そして主任のが険しい顔で類をめくり、陸に厳しい線を浴びせているのが見えた。
陸はくをげ、それから顔をげた。
の背筋は、定規を当てたように真っ直ぐに伸びていた。
その、階段の方から激しい音が響いてきた。
濡れたスニーカーがリノリウムを擦る音。乱れた呼吸。
振り返ると、髪を振り乱し、膝をつくようにしてってきた浅野織の姿があった。