"四年間、他人の父親" 第13話
朝の委任状
夜の分。
激しいが玄関の鉄扉を揺らす、呼び鈴が鳴り響いた。
チェーンをしてドアをけると、ずぶ濡れの川がっていた。傘も差さずにってきたらしく、作業着のツナギからボタボタと滴がに落ちていた。
川は靴を脱ぐも惜しむように、玄関のに踏み込んできた。
そのには、クリアファイルに挟まれた数枚の類が握られていた。
「川さん、がって。タオルを……」
「そんなもんいい!」
川は荒々しく類を引っ張りし、玄関のシューズボックスのに叩きつけるように置いた。
番にあったのは、武蔵野若葉学の角印が押された、公な申請だった。
『緊急保護者代理選定届および親族代表承諾誓約』
「これだ」
川の充血した目が、私を射抜いた。
「教と掛けって、唯の例規定を聞きした。保護者本が急病または事故等のやむを得ない事でできない、『同居または計をにしていた親族、あるいはそれに準ずる法定相続』が代理としてし、誓約に署名捺印すれば、の面談の実施と推薦類の仮提が認められる」
私は類の文字を見つめた。
『法定相続』。
「……私は、陸くんの親族じゃないわ」
「だが、田浩の正当な妻だ!」
川が歩踏み込み、私の肩を掴まんばかりの勢いで迫った。
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「学の名簿には、『田浩』の名が父親として登録されてたんだ。学側も教委に対して言い訳が欲しいんだよ。『父親が急逝したため、その法配偶者である義母が代理として席した』という形にさえすれば、学側は推薦枠を維持できる! 教も裏でそう言ったんだ!」
「そんなの……またしい嘘をねるだけじゃない!」
私の声がずった。
「私はあの子の母親でも何でもない! 会って数しか経っていない、赤のよ! それを今度は『くなった父親の妻』として、私が浩の代役を演じろって言うの!?」
「代役で何が悪い!!」
川の号が、狭い玄関に霊した。
彼の目から、か涙か分からない雫が滴り落ちていた。
「あいつの推薦が消えたら、あいつのはどうなるんだよ! 母親は警察に疑われ、もなくて、にもけなくなって……浩が守ってきたもんが、今夜全部終わっちまうんだぞ! あんたは浩の妻だろ!? 浩が命がけで残したもんを、あんたが見殺しにするのかよ!」
「浩が残したのは、こんな都のいい嘘じゃないはずよ!」
「じゃあ何なんだよ!」
川は胸ポケットから、本の黒い油性ボールペンを抜き取った。
カツン、と鋭い音をてて、そのペンが申請の横、シューズボックスのい板のに叩きつけられた。
ペンの先端が、署名欄の『代理氏名』の空を真っ直ぐに指していた。
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壁にかけられた波計の針が、非な音をててんでいく。
カチ、カチ、カチ。
は夜の分を回っていた。
の朝。
その刻までにこのに私の名をき、印鑑を押し、朝分に若葉学の面談のにたなければ、浅野陸の未来は完全に閉ざされる。
「署名してくれ、美さん」
川は両をシューズボックスにつき、私に向かってくをげた。
柄な男の背が、のたさと焦燥で刻みに震えていた。
「浩のためじゃなくていい。あいつのために……あの歳のガキのために、頼む。名をいてやってくれ」
玄関の暗い灯りの、黒いボールペンが鈍いを放っていた。
そのペンを取るか、取らないか。
私のすつの決断が、すべての結末を決める刻限が、刻刻と迫っていた。