みかん小説
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"四年間、他人の父親" 第9話

夕方の搬入

教からの話を切った翌の夕暮れ、私は吉祥寺駅からしれた裏にいた。

コンクリートの壁に囲まれたコンビニエンスストアの通用。アイドリングを続ける配送用型トラックの横で、キャスター付きの背のいカゴ台から、ペットボトルの段ボールをろしているの姿があった。

浅野陸だった。

制の襟シャツの袖を乱暴に捲りげ、まだ細い腕に青筋を浮かべて箱同に抱えげている。学の部活ではなく、配品の荷ろしの期バイト。本来なら義務教育期の就労には制限があるはずだが、の個商やフランチャイズの裏側では、齢を曖昧にしたまま現渡しで使われる学が珍しくない。

作業が区切りつき、トラックの運転が伝票にサインをしてった。

陸が首に巻いた汚れたタオルで汗を拭った瞬、私は台のから歩みた。

「浅野くん」

陸はびくりと肩を震わせ、振り返った。私だと分かると、額に浮かんでいた汗を拭うを止め、あからさまに元を歪めた。

「……またあんたかよ。しつこいんだけど」

「学から連絡があったわ。除籍謄本の件で、曜の正午までに正式な保護者証をさなければ、都武蔵野の推薦資格を取り消すって」

陸の呼吸が、瞬だけ止まった。

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だが、驚いたのはほんの数秒だった。はすぐに線を元の濡れたアスファルトに落とし、吐き捨てるように言った。

「取り消せばいいだろ。もともと嘘で固めてたんだから、当たりじゃん」

「本当にそれでいいの? あなたの母親は、あなたにまともなを残すために、でをげ続けてきたのよ」

「頼んでねえよ!」

陸は元にあった空のプラスチックケースを、乱暴に蹴りばした。ガシャアン、とけたたましい乾いた音が狭いに反響し、内の防犯ベルが微かに鳴りかけた。

陸は荒い息を吐きながら、私に歩詰め寄った。その瞳には、の施しに対する剥きしの敵が燃えていた。

「あんた、浩さんの何をってんの? んだあとから急にてきて、被害者面して引っ掻き回してさ。浩さんが俺たちに父親面して満してたって言いたいわけ?」

「……私は、浩が何を考えていたのかりたいだけよ」

私は逃げずに陸の線を受け止めた。

「なぜ、子どもを欲しがらなかった夫が、あなたたちのでだけ父親の席に座り続けたのか。あの子どもができなかった穴を、あなたで埋めようとしていたのかって」

「違うね」

陸は酷に言い切った。その声には、迷いも揺らぎもなかった。

「浩さんは、俺の父親になろうとしたことなんて度もない」

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「どうしてそんなことが言い切れるの」

「本が言ったんだよ」

陸はシャツの襟元を乱暴に引っ張り、の記憶を吐きすように語り始めた。

「の最初の面談の、教ので待ってた、俺が聞いたんだ。『おじさん、なんで俺の父ちゃんのふりすんの? 俺の父親になりたいの?』って。そしたら浩さん、真顔で言ったよ。『俺はおの親父には絶対にならない。ただ、学って所がどうしてもの男を座らせたがるなら、俺はその子を埋めに来ただけだ』ってさ」

陸の言葉が、私の胸の央を鋭く貫いた。

「『子を埋めに来ただけ』……?」

「そう言ったんだよ。だから俺も、あのを親父だとったことなんて度もない。ただの、都のいいだとってた。なのに……」

陸の声が、りでわずかに震えた。

「あんたたちは、全部暴いて、全部壊して、浩さんがやってくれたことまで『犯罪の片棒担ぎ』みたいに言って片付けるんだろ。あのが座ってくれたは、全部違いだったって言いたいんだろ!」

陸はそれ以何も言わず、に落ちていたバイトの作業報のバインダーを拾いげると、通用の鉄扉を内側から叩きつけるように閉めた。

い閂がりる属音が、に響き渡った。

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