"四年間、他人の父親" 第8話
除籍謄本という壁
織と別れ、鷹の駅通りを歩いて自宅へ戻った。
夕飯を作る気力など湧かなかった。リビングのかりも点けず、ソファにく体を沈める。
『、学へってすべてを話します』
織のあの言葉が、ので何度も反響していた。
それでいいはずだった。嘘は暴かれ、偽りの父親は消え、私の庭の尊厳は守られる。浩が勝に背負い込んだ余計な荷物は、元の持ち主に突き返される。それが正しい結末だ。
だが、胸のつかえはしも取れなかった。
浩はなぜ、私に言も相談しなかったのか。
『困っている親子がいるんだ。名だけ貸してやりたい』――もしそう打ちけられていたら、私はどう答えていただろう。「馬鹿なことはやめて」と刀両断に切り捨てただろうか。それとも、見らぬ子どもの父親面をする夫を、軽蔑しただろうか。
浩は私の反応を恐れていたのか。それとも――私には決して踏み込ませない聖域として、あの母子を守っていたのか。
考えても答えはない。浩は骨壺ので沈黙を守るばかりだ。
その、ローテーブルのに置いてあったスマートフォンが、甲い着信音を鳴らしながら激しく振した。
画面を見ると、局番から始まる見慣れない番号だった。
胸騒ぎを覚えながら通話ボタンを押す。
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「もしもし、田ですが」
「あ、夜分遅くに変申し訳ありません。武蔵野若葉学、教の岡部と申します」
担任の川ではない。教だった。その声は極度に張り詰め、事務なたさを帯びていた。
「教先……何かありましたでしょうか」
「実は、非常に緊急かつな問題がじまして、奥様にご確認いただきたいことがございます」
教はで、周囲に聞かれないよう声を抑えながら続けた。
「本午、京都教育委員会および区の指導協議会による、都推薦入試の事資格審査がございまして。各庭から提された調査と、民基本台帳の突監査がランダムにわれたのです」
臓が、たいに浸されたようにくなった。
「突監査、ですか」
「ええ。浅野陸くんの調査に記載されていた保護者報……『父・田浩』のデータを照会したところ、区の戸籍システムから、該当者がのに既に除籍されているという通ががってまいりました」
教の息遣いが、受話器を通じて苦しく伝わってくる。
「これは……公学の指導において、極めて悪質な『保護者元の虚偽登録』に該当します。者を保護者として記載し、公文である調査を作成しようとしていたわけですから、教委側も非常にめきっておりまして」
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「……それで、陸くんはどうなるのですか」
私の問いに、教は徹に言い放った。
「現の推薦基準では、保護者関係にな虚偽または瑕疵がある、学の推薦を発することはできません。浅野陸くんが志望している都武蔵野の推薦枠は、取り消しになる能性が極めていです」
「取り消し……」
「浅野織さんにもご連絡を試みましたが、お話が繋がりません。奥様、昨担任の川がお伺いしたお話が事実であれば、学としてもこのまま見過ごすわけにはいかないのです。から、曜の正午が教育委員会への最終類提期限です」
教は、最通牒を突きつけるように、い声で告げた。
「それまでに浅野側から正当な戸籍謄本の提、および保護者欄の正式な訂正がなされない、浅野陸くんの推薦資格は完全に失効します。これは規則ですので、学のではどうにもなりません」