"四年間、他人の父親" 第4話
オイルまみれのタイムカード
央線の架沿いを歩き、油と焼けた鉄の匂いが漂うの奥へ向かった。
『川自備』
古びたトタン根のの奥では、作業灯の黄いので、ジャッキアップされた軽トラックが持ちげられていた。属と具がぶつかりう鈍い音が、規則正しく響いている。
「川さん」
私の声に、体のから黒いツナギを着た柄な男がいてきた。
川義男。配の、無骨で言葉のない男だ。浩の葬儀の席では、親族でもないのに誰よりも激しく肩を震わせて泣いていた、夫の唯無の親友だった。
川は軍をし、額の汗を腕で拭いながら振り返った。
「おう、美さん。どうしたんだ急に。の調子でも悪くなったか?」
いつもの気げな声だった。だが、私の顔を見るなり、彼の笑みが自然に固まった。
私は何も言わず、バッグからあの若葉学の封筒を取りし、オイルで黒ずんだ作業台のに置いた。レンチやボルトが散らばる台のに、真っな封筒が異様に浮きがっていた。
川の線が、封筒のに印字された『若葉学』のスタンプに落ちた。
静寂が、のを支配した。コンプレッサーのい唸り声だけが、元から響いてくる。
「……何だ、これ」
川の声から、先ほどのるさが完全に消えていた。
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「先、あなたが浩の名を使って、この学の者面談にったのね」
私は川の目から線を逸らさずに言った。
「受付簿のサインを見たわ。浩の字を真似ていたけれど、圧がすぎた。あの『井』の字の最のはね。、の見積や伝票で浩のサインを見てきたあなたなら、真似るくらい造作もないことでしょうね」
川は答えず、ポケットから潰れかけたタバコの箱を取りそうとして、いとどまったようにを止めた。
「浅野陸くんに会ったわ」
私の言葉に、川の眉がわずかにねた。
「あの子は言ってた。『浩さんの名が使えるは、学に余計なことを言わせないってオッサンが約束した』って。川さん、どうしてこんなことをしているの? なぜんだ浩の名を使って、赤のの父親のふりをして学へくの? 浩とあの子は……あの族は、体何なの」
私の声が、抑えきれずに震えた。
「お願いだから教えて。浩は私に隠れて、別の庭を持っていたの? あの子は……浩の子どもなの?」
川は顔をげ、ひどく歪んだ、苦痛に満ちた表で私を見た。
「違う」
く、しかしい否定だった。
「浩は浮気なんかしてねえよ。陸も、あいつの血を引いた子どもじゃねえ」
「じゃあ、どうして!」
「どうしてって……」
川はを乱暴に掻きむしり、油まみれのツナギの胸元を掴んだ。
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「浩が急にんじまったからだろ! あいつ、陸が学に入ってからののこと、ずっと気にしてたんだ。推薦がどうとか、内申がどうとかよ。父親の欄に名がねえだけで、学の連が母親をどういう目で見るか、浩は全部ってた。だから俺が……今回だけ、穴埋めにったんだよ。浩の代わりに!」
「代わりにって何よ!」
私の叫び声が、狭い備に反響した。
「あなたが善でやったとしても、やっていいことと悪いことがある! 夫はんだのよ? しないの名を公類にき込んで、嘘をねて……それが浩のためだとでも言うの? そんな勝な真似――」
「勝な真似だと!?」
川が鳴り返した。その迫力に、私は息を呑んで退りした。
川の目は充血し、ギリギリと奥歯を噛み締めていた。
「美さん。あんたは何もらねえんだよ。浩がどんないで、あの席に座り続けてたか」
「……え?」
川は乱暴な取りで事務所のプレハブへ入っていった。すぐに戻ってきた彼のには、汚れた茶封筒が握られていた。
バサリ、とそれが作業台のに放りされる。
から滑りてきたのは、数枚の古びた学事のプリントのコピーだった。運会のプログラム、保護者会の席票、引き渡し訓練の確認。
番にあったの学のPTA名簿のコピーの保護者欄には、見紛うことなき本物の浩の直で、こう記されていた。
『保護者氏名:田 浩(続柄:父)』
「俺が勝に始めたことじゃねえ」
川は絞りすような、掠れた声で言った。
「浩がきてた頃からだ。陸が学になったから、あいつの学事や面談に父親面してってたのは……でもねえ、浩本だよ。、あんたに隠れてずっとだ」