"四年間、他人の父親" 第3話
放課の青い自転
学側は徒との直接の接触を頑なに拒んだ。当然の対応だった。これ以学内で騒ぎをきくすれば、管理責任を問われる教やがてきて話が膠着する。
私は度学をて、正からメートルほどれた通学の角にある、コインパーキングの脇にった。
の湿ったが、半袖の腕をたく撫でていく。
ので、無数の疑問が渦を巻いては消えた。
なぜ見らぬ学の父親欄に、夫の名があるのか。なぜが夫の跡を真似てまで面談に来るのか。そしてなぜ、その子ども自が「本当の父親ではない」とりながら、その茶番を受け入れているのか。
浩の顔が脳裏をよぎる。
休はで静かに文庫本を読み、記には必ず駅のでさなブーケを買ってきた夫。の悪を言わず、揉め事を極端に嫌い、私のパートの愚痴をいつも穏やかな笑顔で「美はよくやってるよ」と聞いてくれた夫。
あの温で善良な男のどこに、見らぬ子どもの『父親』になるような隙があったというのか。
午。終業を告げるいチャイムが響き、やがてから徒たちがパラパラと吐きされてきた。
川から聞きした特徴――黒いリュックサックに、フレームのあちこちが錆びた青いスポーツサイクル。
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分ほど待ったとき、のスロープを勢いよくりてくる台の自転が見えた。
浅野陸だった。
細の体躯に、し丈のくなった制の用スラックス。伸びっぱなしの髪の奥から、周囲を射抜くような鋭い線が覗いている。守られるべきれな子ども、という印象は微もなかった。く同級ともを利かず、でペダルをく踏み込んでいる。
私は歩へ歩踏みし、自転ののにった。
「浅野陸くん」
キッと甲いブレーキ音が鳴り、輪がわずかに滑った。陸は器用に片をアスファルトにつき、苛ちを隠そうともせずに私を睨みつけた。
「……誰? 邪魔なんだけど」
歳のにしてはく、乾いた声だった。
私は逃げられないよう、自転のカゴに片を置いた。
「田浩の妻です」
その瞬、の表から全てのきが消えた。
目を見くでもなく、怯えるでもない。ただ、瞳の奥にあるシャッターが音をてて完全にりたのが分かった。彼は私の顔をからまでたく値踏みするように見つめ、それからカゴに置かれた私のを、自分のい指先で払いのけた。
「……関係ない」
「関係なくないわ。私のに、あなたのお父さん宛ての面談通が届いたの。父親の名は田浩。私のくなった夫よ」
陸は舌打ちをつ打った。
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その態度には、子ども特の揺ではなく、の嘘に慣れきった者特のが滲んでいた。
「もうんだんだろ、あのは。に」
「ってたのね」
「ってるよ。だから何? あんたに関係あること、何つないから」
再びペダルにをかけようとするの腕を、私はわず掴んだ。骨張った細い首が、制の袖から覗いていた。
「待ちなさい。先、浩の名で学に来た男は誰? あなたのお母さんはそのことをっているの?」
矢継ぎの問いかけに、陸は激しく腕を振り払った。その力は予以にく、私の体がよろめいた。
陸は自転を跨いだまま、憎悪すら含んだ徹な線で私を見据えた。
「川のオッサンに頼まれて探りに来たわけ?」
「……え?」
聞き覚えのある名に、私の息が止まった。
陸は私の揺を見逃さず、笑を浮かべた。
「オッサン、あんたには絶対バレないようにするって言ってたのに、ヘマしたんだな。言っとくけど、浩さんの名が使えるは学に余計なこと言わせないって約束したのはオッサンの方だ。俺たちを引っ掻き回す気なら、あのに直接文句言えばいいだろ」
は乱暴にハンドルを切り、私の脇をすり抜けてペダルを踏み込んだ。
青い自転が、夕暮れの通学を猛スピードでざかっていく。
私はそのにち尽くしていた。
『川のオッサン』。
浩の代からの親友で、武蔵境の境町でさな自備を営んでいる、あの川義男のことだった。