"四年間、他人の父親" 第1話
田浩殿の郵便物
夫の浩が突然の全で世をってから、ちょうどが過ぎていた。
や盆、周忌といった儀式をつひとつ終え、区役所の分い続き類を片付け、ようやく分の洗濯物と分の噌汁の分量に慣れてきたところだった。結婚して。子どもはいなかった。静かすぎる部の空気に寂しさをじないと言えば嘘になるが、それでも私の常は、かつての落ち着きを取り戻しつつあった。
文具卸の会社で事務のパートを終え、夕方過ぎに武蔵野内の自宅アパートへ戻る。
階の集ポストのダイヤルを回し、からチラシの束を抜き取ったときだった。ピザの広告と通販カタログの隙に、見慣れない角形のい封筒が挟まっていた。
差の欄には、青いスタンプでこう印字されている。
『武蔵野若葉学』
宛名を見た瞬、指先が止まった。
『田浩 殿』
のに除籍され、この世のどこにもしないはずの夫のフルネームだった。
ダイレクトメールの類ではない。切ではなく公印が押され、宛名のきの文字は学の事務員か教員のものらしく、丁寧にっていた。所にむ同姓同名の誰かへの誤配だろうか。そうって所欄を確認したが、番も、築のこのアパートの部番号『〇』も、違いなく私のだった。
広告
部に入り、靴も脱がないまま、チェーンをかけた暗い玄関で封筒の糊付けをカッターで切った。
からてきたのは、枚のつ折りのプリントだった。
『令〇度 第2学 第1学期末者面談のご案内及び程確認』
そのにある記入欄に、目が釘付けになった。
徒氏名:浅野 陸(あさの りく)
学級:23組
保護者氏名:田 浩
面談希望:第希望 ()16:00〜
浅野陸。聞いたこともない名だった。
浩の親戚にそんな子どもはいない。私の親族にも当たりはない。何かの違いで、別の学の庭に届くはずの通が、夫の古い名義と混ざって発送されたのだろう。公学の連絡網や名簿の管理ミスは、ニュースでもたまににする。
放っておくこともできた。だが、もし期までに返送されず、その『浅野陸』という徒が学で利益を被ったらが悪い。
私は壁にかけられた固定話の受話器を取り、プリントに記載されていた学の代表番号を押した。
呼びし音が回鳴ったあと、事務の女性がた。
「お忙しいところ恐れ入ります。〇号の田と申しますが、そちらから届いた者面谈のプリントについてお話いたしました」
「はい、23組の浅野陸くんの保護者様ですね。担任の川におつなぎします」
事務員は疑いもせず、淀みない調で言った。
広告
反論するもなく保留音が流れ、秒ほどで、代半ばとわれる男性教員の声に切り替わった。
「お話代わりました、担任の川です。程の件でしょうか? 先提いただいた希望用でおは確保してありますが、急なご都でも?」
「いえ、そうではありません。完全に違いです」
私は努めて淡々と、事実だけを告げた。
「元に届いた封筒に、私のくなった夫の名が保護者として印刷されていました。田浩とありますが、夫はちょうどのに界しております。うちには子どももおりません。所の別のご庭の類と取り違えていらっしゃるのではないでしょうか。個報ですし、急にデータを修正していただきたくじます」
受話器の向こうが、すっと静まり返った。
職員特のざわめき――くで鳴るチャイムや印刷の音だけが、受話器を通じて微かに漏れてくる。
数秒の沈黙の、川と名乗る担任は、ひどく困惑した、探るような声をした。
「……あの、失礼ですが、お話の方は?」
「妻の美です。戸籍も私が世帯主になっております」
「奥様、ですか」
教員は言葉を濁し、何か机のの類をめくるような音をてた。そして、信じられないという響きを帯びた声で、こう言った。
「しかし……それはおかしな話です。先われた第回の面談の際、お父様ご本がこちらの面談にいらっしゃいましたよ」
の奥で、さくキーンと属が擦れるような音がした。
「……はい?」
「田浩さんです。浅野陸くんのお父様として、この面談の子に座り、私と分ほど陸くんの志望について話しわれました」
臓が、嫌なさで度だけねがった。