"誰も売るなと育てた父" 第9話
乾いた声の主
曜の朝、カーテンをけると、空は苦しい鉛のに覆われていた。
リビングにりると、卓にはラップをかけられたおにぎりがつと、めきった麦茶のポットが置かれていた。父の姿はなかった。奥の仏で、母の遺に向かって線をあげる微かな鈴の音だけが、チーンとく響いている。
同窓会の始刻は午半。残されたは、を切っていた。
私はコートを羽織り、スマートフォンの画面を睨みながらのへた。たいのが首筋を撫でる。
昨夜、内から聞きしていた話番号があった。川久美が現勤めているという、埼玉県部にある個経営のクリーニングの直通番号だった。
「川さんは曜も朝からアイロンがけのパートに入っているはずだ」と内は言っていた。
肩にを止め、運転席から震える指で発信ボタンを押した。
数回の械な呼びし音のあと、背で巨な蒸気アイロンが空気を抜くような、プシューという鋭い破裂音が混じって話が繋がった。
『はい、舎クリーニングですが』
掠れてはいるが、く芯の通った女性の声だった。齢相応のしわがれ方のに、どこか者を易に寄せつけない質さがあった。
「あの、恐れ入ります。そちらに、川久美さんはいらっしゃいますでしょうか」
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瞬の沈黙があった。作業の属音がのき、受話器が持ち替えられる微かな擦れの音が響く。
『私ですが。どちら様ですか』
臓が喉元までねがった。私はハンドルを握りしめ、渇いた喉から声を絞りした。
「突然のお話をお許しください。……私、浩の息子の、健太と申します」
受話器の向こうから、切の音が消えた。の械音すら遮断されたかのような静寂が、波を通じて私の鼓膜を圧迫する。
「父の……のクラスメイトの、です。昨夜、父から当の話を聞きました。父があなたに対して、どれほど卑怯で取り返しのつかない裏切りをしたか、すべてりました」
私は気に言葉を畳みかけた。謝罪をにすることで、父の犯した罪をしでも希釈しようとする、浅ましい防本能が働いていたのかもしれない。
「今夜の同窓会に、川さんが席されると聞きました。……もし、父の顔を見ること自体が苦痛であるなら、私が責任を持って父を会にかせません。絶対に、を踏み入れさせませんから」
そこまで言っただった。
受話器の向こうから、いため息が落ちてきた。りでも揺でもない。ひどくめ切った、乾いた息だった。
『さんの息子さん』
川久美は、私の必の訴えを遮るように、静かに言った。
『きな勘違いをしているようだから、ひとつだけ言っておくわね。
……あなたのお父さんは、私のを壊したわけじゃないのよ』
「え……?」
予もしなかった言葉に、私の考が止した。
『私のはね、どのみちあのの末には、夜逃げ同然で町をてく運命だったの。ヤミの督促状は毎のように郵便受けに突っ込まれていたし、アパートのさんからも鍵を替えられた。浩君が教で何を言おうが言うまいが、私はあの学を辞めるしかなかったのよ』