"面談記録にあった前妻の名前" 第13話
捨てられる恐怖
「お母さんと会うはね……いつも、すごく胸が苦しかった」
遥はジャージの袖で涙を拭いながら、胸の奥底に溜め込んできた澱を、吐きすように語り続けた。
「お母さんと映画を見たり、美しいご飯をべたりすると、すごく楽しくて……でも、笑えば笑うほど、にいる美咲の顔が浮かんできて……」
彼女は自分の胸ぐらを、爪がい込むほどく掴んだ。
「私、美咲から何かを盗んでるんじゃないかってってた。美咲が作ってくれたマフラーを巻いてお母さんに会いにくのも、お母さんからもらったヘアピンを隠してに帰るのも……全部、私が汚くて、ずるい子供だからだって」
「遥、そんなこと――」
「美咲が優しくしてくれるたびに、にたくなった!」
遥が叫んだ。
その痛な叫びが、夜の静まり返った子供部に突き刺さった。
「美咲がを測ってくれたり、美しいご飯を作ってくれたりするたびに……私、嘘をついてるのに、こんなに良くしてもらっていいのかなって……。いつかバレたら、美咲は私のことをどんな目で見るんだろうって、毎晩怖くて眠れなかった」
遥はベッドのに崩れ落ち、シーツに顔を押し当てて激しく泣きじゃくった。
「胃が痛くて薬をんでるときだけ、しだけできたの……。痛いいをしてるだけは、嘘をついてる罰を受けてる気がしたから……!」
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息ができなかった。
目のの女が、どれほどの暗ので、でを震わせていたのか。
私は「通しのいい関係」などという傲な言葉に甘え、彼女の引きしの鍵の音にも、のでち止まる音にも、何つ気づいてやれなかった。
「美咲……ってるよね……? 汚い嘘つきだって、ってるよね……?」
遥は涙でぐしゃぐしゃになった顔をげ、怯えた仔犬のように私を見つめた。
そして、私の胸を完全に打ち砕く言葉を、泣き叫んだ。
「私……美咲にられるのが怖かったんじゃないの……!
美咲に『もういらない』って……『本当のお母さんがいるなら、私はいらないね』って、捨てられるのが怖かったの……!」
その瞬、私の目からも涙が溢れした。
私はベッドのにを投げし、泣き叫ぶ遥のさな体を、力いっぱい抱きしめた。
「捨てないよ……!」
遥の細い背に腕を回し、骨が軋むほどく抱きしめた。
「捨てるわけないでしょ! 何があっても、絶対に捨てたりしない! 遥を放すわけないじゃない!」
「美咲……美咲……っ」
遥は私の胸に顔を埋め、子供のように声をげて泣いた。
、私ので度も見せたことのなかった、本気の、剥きしの嗚咽だった。
「遥は何も悪くない。つも悪くないよ。お母さんに会いたくなるのも、お母さんが好きなのも、当たりのことなの。誰のことも裏切ってなんかいない」
私は遥の背を、何度も、何度もさすった。
「の母親を好きでいることは、罪じゃないの。それを遥に背負わせて、嘘をつかせたが……私たちが、全部違ってたの」
遥の震えが、しずつ、私の体温のに溶けていくのをじた。
かけて積みげてきた「慮がちで礼儀正しい関係」が音をてて崩れり、その瓦礫のから、血の通った、本当の痛みを分かちう絆が、ようやく産声をげていた。