"面談記録にあった前妻の名前" 第12話
父親の何気ない言
「……言ったら、壊れちゃうとったから」
遥のから漏れたのは、掠れた、さな声だった。
彼女は赤く腫れた目で私を見つめ、シーツをぎゅっと握りしめた。
「……学に入るしのこと、覚えてる?」
「の?」
「うん。私、急にをして、週くらい学休んだことがあったでしょ」
記憶を繰り寄せる。
確かにあった。遥が学の、インフルエンザでもないのにが続き、私が仕事を休んで病したことがあった。
「あのがる……お父さんに、ファミレスに連れてかれたの。そこで……初めて、お母さんに会った」
遥は線を宙に彷徨わせながら、記憶の蓋をけていった。
「すごく緊張して……お母さん、泣いてて、私のをずっと握ってた。嬉しかった。ずっとんじゃったとってた本当のお母さんが、目のにいて、笑いかけてくれたから」
それは、実の母子として当たりの、自然なだったはずだ。
だが、そのびは、への帰りで瞬にして恐怖へと変えられた。
「帰り、のでお父さんに聞いたの。『お母さんが戻ってきたら、美咲はどうなっちゃうの?』って」
私の臓が、トクンと嫌な音をてた。
「美咲は、毎朝お弁当を作ってくれて、私の話をたくさん聞いてくれて……すごく好きだったから。お母さんが戻ってきたら、美咲はどこかにっちゃうのかなって、すごく怖くなって……だから、お父さんに聞いたの」
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健司の顔が、脳裏をよぎる。
あの男が、幼い娘の切実な問いに対して、体どんな言葉を返したのか。
「お父さんね、運転しながら、ため息をついたの」
遥の肩が、あのの記憶をなぞるようにさく竦んだ。
「『だから、このことは美咲には絶対に内緒にしておけよ』って。『美咲にられたら、のがめちゃくちゃになって、ややこしくなる。美咲もおたちの面倒を見るのが嫌になって、てっちゃうかもしれないからな』って……」
の奥で、何かがプツリと音をてて切れた。
健司にとっては、そのしのぎの、ただの言い訳だったのだろう。
妻との再会を隠し通し、妻の追及から逃れ、自分が庭内で矢面にたないための、軽々しい「脅し文句」。
だが、歳だった女にとって、それは世界の崩壊をする絶対の宣告だったのだ。
実の母親と会えば、育ててくれた美咲がてってしまう。
自分が母親の温もりを求めれば、このがめちゃくちゃになってしまう。
「お父さん、笑いながら言ったの。『美咲のでは、普通の娘でいろよ。そうすれば、誰も傷つかないで済むんだから』って……」
遥の瞳から、とめどなく涙が溢れしていた。
「私……怖かった。美咲がてっちゃうのも、お父さんがるのも、お母さんに『もう会えない』って言うのも、全部怖かった。だから……お父さんの言う通りにしようって決めたの」
この子は、ずっと、でその呪いを背負い続けていたのだ。
父親が投げ捨てた無責任な言を、自分の胸にく突き刺したまま。