"面談記録にあった前妻の名前" 第11話
閉ざされた子供部
夜。
健司はリビングでふて寝するようにい鼾をてていた。
が静まり返り、たいの空気が廊の板から忍び寄ってくる。
私は台所でマグカップに湯を注ぎ、階へと静かに階段をがった。
遥の部のドアのにつ。
ドアの隙から、細いかりが漏れていた。
まだ起きていた。
コン、コン。
軽く度、ノックをした。
「……遥? 起きてる?」
返事はなかった。
けれど、部のからシーツが擦れる微かな音が聞こえた。
私はゆっくりとドアノブを回した。
部の隅、ベッドので、遥は体操着のジャージを着たまま膝を抱えて座り込んでいた。
気を消し、机ののスタンドライトだけが、ぼんやりと彼女のさな背を照らしている。
「入ってもいい?」
遥は顔をげず、たださく頷いた。
私は部に入り、ドアを静かに閉めてから、ベッドの脇にある学習机の子に腰をろした。
机のには、かれたままの数学のワークと、さな巾着袋が置かれていた。
巾着のから、昨、綾子から聞いたあの販の胃薬の箱が、半分覗いていた。
「……お腹、痛むの?」
私の問いかけに、遥の華奢な肩がビクッとねた。
彼女は慌てて机のの巾着袋をジャージの裾で隠そうとした。
「ううん……痛くない。丈夫」
「嘘つかなくていいよ」
私は湯の入ったマグカップを机の端に置き、遥のそばに寄った。
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ベッドの端に腰をろし、彼女の固く握られたに、そっと自分のをねた。
指先が、驚くほどえ切っていた。
「ドラッグストアの胃薬、見ちゃった。……ごめんね。ずっと気づいてあげられなくて」
遥はハッと息を呑み、怯えたように私を見つめた。
その瞳の奥には、秘密が暴かれた屈辱と、底れない恐怖が渦巻いていた。
「美咲……どうして……」
「昨ね、綾子さんに会ってきたの」
その名をにした瞬、遥の呼吸が止まった。
握りしめられていた彼女の指先が、目に見えてガタガタと震え始める。
「お母さんに……会ったの……?」
「うん。駅の喫茶で、で話してきた」
「った……? お母さんのこと、鳴った……?」
遥の声は、今にも消え入りそうだった。
その瞳から、粒の涙がポロポロと零れ落ちて、ジャージの膝のに暗い染みを作っていく。
「美咲、ごめんなさい……私、嘘ついてた。お母さんとずっと会ってた。美咲に隠れて、映画にったり、プレゼントもらったりしてたの……。ごめんなさい、ごめんなさい……」
遥は両で顔を覆い、しゃくりあげるように泣き始めた。
謝罪の言葉を繰り返すその姿は、まるで罪を犯して許しを乞う罪のようだった。
「遥、顔をげて」
私は彼女の首を優しく包み込み、顔を覆うをそっと引きした。
「私、ってないよ。綾子さんにも鳴ったりしてない。ただ、遥がこの、どんないで暮らしてきたのかを聞いてきたの」
「美咲……」
「どうして、そんなになるまででしてたの? どうして、お母さんと会ってることを、私に隠さなきゃいけなかったの?」
私の穏やかな声に、遥は唇を激しく震わせた。
彼女の喉の奥から、押し殺していたが、壊れた堤防のように溢れそうとしていた。