"面談記録にあった前妻の名前" 第7話
駅の喫茶
「お、本気で言ってるのか?」
曜の夜、寝で私の言葉を聞いた健司は、着替えていたパジャマのを止め、骨に眉をひそめた。
「綾子に会う約束をしたわ。の午、隣町の駅で」
「馬鹿な真似はやめろ!」
健司は声を荒らげ、私の肩を掴もうとした。
私はそのをたく払いのけた。
「どうして会うんだよ。おが直接話すことなんて何もないだろ! あいつは今、静かに暮らしてるんだ。おが乗り込んでいって何を言うつもりだ? 遥の母親面して説教でもする気か?」
「説教なんてしないわ」
私は夫の目をまっすぐに見据えた。
「あなたが、何を『管理』してきたのかを確かめにくだけよ。遥がで何を隠して、何をしているのか、あなた度でも真面目に見たことがある?」
「俺は遥を守るために――」
「守ってなんかいないわ」
私の平坦な声に、健司が言葉を詰まらせた。
「あなたはただ、自分の目のから面倒なの衝突を排除したかっただけよ。遥に嘘をつかせることが、どれほど残酷なことか、像すらしていない」
健司はそれ以、言葉を返せなかった。
苦々しそうに舌打ちをし、背を向けてベッドに潜り込んだ。
彼がこれ以私を止められないのは、自分自が番ろ暗いことをっているからだ。
翌の午。
自宅から私鉄で駅れた、し寂れた駅のロータリーにりった。
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指定した喫茶は、古い雑居ビルの階にあった。
カランコロンとドアのベルを鳴らして内に入ると、昭の面を残す琥珀の空に、クラシック音楽がく流れていた。
客はまばらだった。
奥のボックス席に、で座っている女性の姿が目に入った。
私よりしだろうか。
のベージュのカーディガンに、黒いスラックス。
肩まで伸びた髪をろでひとつに束ね、化粧気のない顔で、テーブルのののグラスをじっと見つめていた。
派な女でも、勝さを面にした女でもなかった。
どこか頼りなげで、が吹けば消えてしまいそうなほど細い肩をしていた。
私が席にづくと、彼女は気配を察して顔をげた。
線が交わった瞬、彼女の瞳がさく揺れた。
「……神、美咲さんですか」
かすれた、けれど柔らかな声だった。
「はい。美咲です。初めまして、綾子さん」
私が対面の席に腰をろすと、綾子は膝ので組んだ両をぎゅっと握りしめた。
その指先が、微かに震えているのが見えた。