"面談記録にあった前妻の名前" 第4話
の半券
翌朝、曜。
健司は逃げるように「休勤になった」と言い残してをてった。
遥は朝から所の図館へ自習にき、のには私だけが残された。
静まり返った廊を歩き、私は階の遥の部のにった。
プライバシーを尊して、普段は掃除のとき以、勝に入らないようにしていた部だ。
ドアをノックする癖がそうになり、誰もいないことに気づいて静かにノブを回す。
向きの窓から、の柔らかなが差し込んでいた。
頓された本棚、机のに置かれた卓カレンダー。
カレンダーには、部活の予定や塾の模試の程が、分けされたペンで細かくき込まれている。
私は部を荒らすような真似はしたくなかった。
ただ、遥がこの、どんな世界をきてきたのかをりたかった。
どんないで、私と向かいっていたのかを。
机の横にあるスチールラックの番、遥が学の頃から使っているさな製の引きしに目が留まった。
昔はシールやビーズが入っていたその箱の取っには、さな京錠がかけられていたはずだった。
だが今は、鍵はされ、引きしが数ミリだけ浮いていた。昨晩の揺で、閉め忘れたのだろうか。
私は指先をかけ、引きしを引いた。
に入っていたのは、宝でも価な品でもなかった。
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輪ゴムで束ねられた映画の半券。
族館の入チケット。
そして、さな袋。
番の半券に目を落とす。
『2023414 13:45映 シアター3 般/』
遥が学に入学してすぐの付だった。
記憶が急速に蘇る。
あの、遥は「部活の先輩たちと映画にってくる」と言ってかけたはずだ。
夕方帰ってきた遥は、どこか数がなく、疲れた顔をしていた。
私は「しい環境で緊張したのね」と声をかけ、夕飯に好物のグラタンを焼いてやった。
あの、彼女が座っていたスクリーンの隣には、先輩ではなく、綾子がいたのだ。
半券は数枚あった。
ヶに度、あるいはヶに度のペースで、正確に刻まれた付。
都内のシネコン、隣のアウトレットモール、科学館の特別展。
袋のには、いピンクのリボンがついたヘアピンが入っていた。
見覚えがなかった。
遥がで着けているのを見たことがない。
袋の底には、折りたたまれた枚の便箋が入っていた。
『遥へ。お誕おめでとう。背が伸びて、もうママの目線と変わらないね。
選んでくれたヘアピン、すごく似ってたよ。
ではつけられないかもしれないけれど、ママと会うときは、いつでも持ってきてね。
無理をさせてごめんね。いつもっています。 ママより』
胸が詰まり、息がうまく吸えなくなった。
「ではつけられないかもしれないけれど」
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綾子もっていたのだ。
自分が遥にとって、隠さなければならないであることを。
そして遥は、母親から貰ったプレゼントを、この暗い引きしの奥に隠し、をてから髪につけ、帰宅するにしてポケットにねじ込んでいたのだ。
、私が注いできたは何だったのだろう。
をした夜に額に当てたのひらも、反抗期にぶつかりいながら交わした言葉も、遥にとっては「本当の母親を隠すための壁」に過ぎなかったのだろうか。
引きしを元の位置に戻し、私は部をた。
階段のすりを掴むが、かすかに震えていた。
裏切られたというりは、議なほど湧いてこなかった。
ただ、私たちが暮らしてきたこのという歳の元が、最初から空洞だったような、い目眩だけが残っていた。