"面談記録にあった前妻の名前" 第1話
の保護者記録
指導のパイプ子は、の半ばにしては底えがした。
「失礼します。健司が急な張になりまして、代わりに伺いました」
私がをげると、遥の担任の先は、元の分いファイルを繰りながら鏡の奥の目を細めた。
「ああ、神さん。お忙しいところ恐れ入ります。遥さん、最の模擬試験でも順調に点数を伸ばしていますよ」
先は世話をに切りげ、希望調査票のコピーを机のに広げた。
「第志望は都の駒ですね。本の志も固いですし、内申点から見ても分に狙えるラインです。先もお母様とお話しした通り、推薦入試の論文対策をめにめておけばかといます」
流れるような先の調に、私は曖昧な笑みを浮かべたまま、喉の奥がさく引っかかるのを覚えた。
「……先、すみません。先、とおっしゃいましたか?」
「ええ。のでしたね。放課におをいただいて」
「あの……私、先は学に伺っていませんが」
先のがピタリと止まった。
クリップボードのを指先でめくり、面談記録の付に目を落とす。
「ええと……失礼、お父様ではなく、お母様がいらっしゃいましたよね。ほら、こちらに」
先が何気なく差し向けたバインダーの端に、ボールペンでかれた几帳面な文字が並んでいた。
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面談者氏名:神綾子。
臓が、たいに直接浸されたような覚がした。
「……遥の母、ですか」
「ええ。遥さんとご緒にいらして、推薦の基準についてに質問されていきましたよ。……あ、もしかして、ご族ので引き継ぎがうまくいっていませんでしたか?」
先は私の顔の変化に気づいたのか、急に声音を落とし、探るような目を向けた。
神綾子。
夫である健司の妻の名だった。
に健司と再婚したとき、彼から聞かされていた説はだった。
「遥が歳のときに婚した。あいつはにって、もうく連絡も取っていない」
私はその言葉を疑ったこともなかった。
遥が歳のときから、私はこので暮らしてきた。
朝の弁当を作り、をせば仕事を休んで児科へり、だらけの体操着を洗い、反抗期に差し掛かった娘の背を、適度な距を保ちながら見守ってきた。
遥に「お母さん」と呼ぶことをしたことは度もない。彼女はずっと私のことを「美咲」と呼んでいたし、私もその通しのいい関係に満していたつもりだった。
血は繋がっていなくても、活をねてきたという確信があった。
遥の爪の形も、靴のサイズも、数学の図形問題が苦なことも、全部私がっているとっていた。
「……いえ。私の確認でした。
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申し訳ありません」
私は爪がのひらにい込むほど拳を握りしめ、喉の震えを必で抑えながら微笑んでみせた。
「先、続けていただけますか。推薦の基準について、詳しく伺いたいです」
その、先がどんな説をしたのか、ほとんどに入らなかった。
机のの記録用に記された「神綾子」という文字だけが、網膜の裏側に焼き付いてれなかった。
連絡を取っていないはずの女が、先、娘のを決める教に座っていた。
私には何の言もなく。
父親である健司も、娘である遥も、その事実を完全にみ込んだまま、何わぬ顔で私の作った夕飯をべていたのだ。
学をると、曇の空からたいが吹き抜けた。
携帯話を取りし、健司の番号を表示させる。
今夜は名古で泊まりのはずだった。
指が発信ボタンので止まり、私は画面を伏せた。
話で聞くような話ではない。
それに、健司を問い詰めるに、私にはどうしても確かめなければならない相がいた。