"あんたの金なら一滴も飲まない" 第15話
目の居
。牛乳の配達が終するの午、玄関の引き戸が静かにいた。
「ごめんください」
控えめな声とともに現れたのは、のジャンパーを着た藤井さんだった。
には、元の菓子の包装で包まれたさな箱が提げられていた。には、助席まで段ボール箱が積み込まれた古い軽自がまっている。
「お邪魔します。、朝番で熊本へ発することになりまして……ご挨拶だけでもといまして」
母は居から杖をついててくると、玄関先につ藤井さんをじっと見げた。
「藤井さん。……どうぞ、がってください」
「いえ、私はここで……」
藤井さんがいつものように慮してずさりしかけた、母は珍しくい調で言った。
「がってください。たいが入りますから」
藤井さんは瞬戸惑ったように目を瞬かせ、それから「……では、失礼します」とさく呟いて、丁寧に靴を揃えて玄関をがった。
、毎おを払い続けてくれた男が、このの敷居を跨いだのは、これが初めてのことだった。
畳の居の真んにある座卓を囲んで、で座った。
私が台所から淹れてきたい緑茶を差しすと、藤井さんは両で湯呑みを受け取り、背を丸めて静かにすすった。
「お茶、美しいです。引っ越しの準備ばかりで、温かいものをむ暇もありませんでしたから」
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「変でしたね、でのお片付けは」
母が座布団ので膝にを揃え、静かに尋ねた。
「ええ、まあ、した荷物もありませんから。息子夫婦が向こうで部をつ空けて待ってくれているそうで、これからは孫の保育園の送り迎えでもしながら、のんびり暮らすつもりです」
「それは、何よりですね」
会話はそれ以、弾まなかった。
気まずい沈黙というよりは、のすぎる空を埋めるための言葉を、お互いに持っていないような静けさだった。
親戚でもなく、友でもなく、仕事の同僚だったのも以のことだ。のには、父のと、毎朝の牛乳という本の細い接点しかしなかった。
居の柱計が、カチ、カチ、とい音を刻んでいる。
藤井さんは湯呑みを置き、座卓に両をついてくをげた。
「さん。……今まで、本当に申し訳ありませんでした」
唐突な謝罪に、私は息を呑んだ。
「私の勝な都で、急にこんな形で終わらせることになってしまって。先輩との約束を、途で投げすような形になってしまいました」
「藤井さん」
母が、遮るようにその名を呼んだ。
「をげてください。謝るようなことなんて、つもありませんよ」
母はそう言うと、杖を横に置き、ゆっくりとちがった。